『トレインスポッティング』 、『ザ・ビーチ』 、『127時間』 、『トランス』 のダニー・ボイル 監督、『ソーシャル・ネットワーク』 のアーロン・ソーキン が脚本を手がけた『スティーブ・ジョブズ』 (15)のサウンドトラックです。物語の土台になっているのはウォルター・アイザックソンのベストセラー『スティーブ・ジョブズ』ですが、2013年に公開されたジョシュア・マイケル・スターン監督の『スティーブ・ジョブズ』のような伝記映画にはなっていません。
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ソーキンが注目したのは、ジョブズが行った伝説のプレゼンの数々。この映画は、3つの新作発表会のプレゼン――1984年のMacintosh、1988年のNeXT Cube、1998年のiMacで構成されています。しかも実際に描かれるのは、プレゼンそのものではなく、直前40分の舞台裏です。
この3幕の構成は、サントラとも深く関わるものなので、ここでその意味を少し掘り下げておきたいと思います。
ジョブズはそのプレゼンで、3つのシーンや3つの機能など、3つの要素やメッセージで説得力を生み出す3点ルールを厳守し、聴衆を魅了しました。ベストセラー『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』でその伝説のプレゼンを分析した著者カーマイン・ガロは、同書をまとめるにあたって、「ジョブズが好んで行うプレゼンテーションのメタファー、3幕構成の演劇という形」をとりました。この映画の構成もそれに倣っているといえます。
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イギリスの作曲家ダニエル・ペンバートン が手掛けたこのサントラは、そんな3幕構成をさらに際立たせる役割も果たしています。映画のプレスでは、音作りのプロセスが以下のように説明されています。
「音楽を手掛けたダニエル・ペンバートンは、ボイルから幕ごとの3つの音楽を依頼された。第1幕は新しい技術の無限の可能性が期待された時代に合わせて、初期のコンピュータのサウンドをイメージした曲が作られ、ジョブズがファンだったヴァンゲリスがよく使っていたヤマハCS80のシンセサイザーで演奏された。
第2幕はオペラの復讐劇のイメージで、二つの楽章が作られた。第1楽章は軽快で気まぐれなアレグロで始まる。第2楽章は終幕に向かうにつれて、だんだんと重厚さを増していく。途中でコーラスが入るが、わざわざこのためにイタリア語でコンピュータをテーマにしたオペラの台本が書かれ、74人編成の豪華なオーケストラで演奏された。