映画『ハッシュパピー バスタブ島の少女』の監督ベン・ザイトリンは、ミュージシャン/プロデューサーのダン・ローマーとともに音楽も手がけている。彼の映画では、音楽が非常に重要な位置を占めている。というのも、ザイトリンは高校や大学時代には、バンドで活動したりミュージカルを創作するというように、まずなによりも音楽に関心を持っていた。ちなみに演奏する楽器は主にギターで、ピアノもこなすようだ。
そんなザイトリンにとっては映像と音楽は対等なものであって、どちらも共通のイマジネーションから生み出され、深く結びついている。筆者は『ハッシュパピー バスタブ島の少女』試写室日記で、この映画の音楽について、「マイケル・ナイマンとバラネスク・カルテットがレクイエムを奏でているようなテイストもある」と書いた。
以下のYouTubeは、ザイトリンとローマーも参加したサントラの1曲<Once There Was a Hushpuppy>の演奏風景を収めたものだ。筆者はすぐにナイマンを連想するが、それは間違いではなかったようだ。
ネットでザイトリンのインタビューをチェックしたら、影響を受けた音楽家として、クラシックではチャイコフスキーとラフマニノフ、映画音楽の作曲家ではマイケル・ナイマン、ジョン・ウィリアムズ、初期のダニー・エルフマンを挙げていた。ケイト・ブッシュもよく聴いていたという。あとは直接映画の舞台に結びつく様々なケイジャン・ミュージックだ。
しかしそのなかでも特に注目なのはナイマンの音楽との繋がりだろう。かつてナイマンは自分の音楽のことを“Death Music”と表現していた。たとえば、昔、筆者がインタビューしたとき、このように説明していた。
|