イギリスを代表する監督スティーヴン・フリアーズの『あなたを抱きしめる日まで』(13)[2014年3月15日(土)より全国ロードショー]のオリジナル・サウンドトラックです。
[ストーリー] その日、フィロミナは、50年間隠し続けてきた秘密を娘のジェーンに打ち明けた。1952年、アイルランド。10代で未婚のまま妊娠したフィロミナは家を追い出され、修道院に入れられる。そこでは同じ境遇の少女たちが、“堕落した女”と見なされ、出産の面倒を見る代わりに過酷な労働を強いられていた。フィロミナは産まれた男の子をアンソニーと名付けて溺愛するが、面会は1日1時間しか許されない。そしてアンソニーが3歳になったある日、修道院は金銭と引き換えに、彼を養子に出してしまう。
それ以来、わが子のことを一瞬たりとも忘れたことのない母の想いを受け止めたジェーンは、BBCの元ジャーナリストのマーティンに話を持ちかける。愛する息子にひと目会いたいフィロミナと、息子捜しの記事に再起をかけるマーティン、全く別の世界に住む二人の旅が始まる。果たしてフィロミナは、再びその腕にアンソニーを抱きしめることが出来るのか――? (『あなたを抱きしめる日まで』プレスより)
サウンドトラックを手がけているのは、毎年のようにアカデミー賞にノミネートされ、『アルゴ』、『ムーンライズ・キングダム』、『君と歩く世界』、『ゼロ・ダーク・サーティ』などの音楽が記憶に新しいフランス人の作曲家アレクサンドル・デスプラ。過去にフリアーズ監督とは『クィーン』(06)、『わたしの可愛い人―シェリ』(09)、『タマラ・ドゥルー〜恋のさや当て〜』(10)で組んでいます。
映画は、ピーター・ミュラン監督の『マグダレンの祈り』やジム・ローチ監督の『オレンジと太陽』でも描かれた実話に基づき、重くなりがちな題材を扱っていますが、シリアス一辺倒になってしまわないのは、イギリス映画らしいユーモアをちりばめた秀逸な脚本とデスプラが紡ぎ出す軽やかなスコアによるところが大きいです。
リズミカルなワルツを基調とし、ストリングス、ハープ、ピアノ、パイプ・オルガン、鉄琴などを使い分けた変幻自在のバリエーションが、ドラマのユーモアに呼応しているといっていいでしょう。オルゴールのような響きは、ダニー・エルフマンが手がけた『シザーハンズ』の音楽を想起させたりもします。
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