[ストーリー] 物語は、主人公セルゲイが聾唖者専門の寄宿学校に入学するシーンから始まる。その学校は、公式祝賀会が開催され、一見、穏やかで温和な雰囲気に溢れているが、裏では、無慈悲な暴力と犯罪、売春を行なう悪の組織=族(トライブ)によるヒエラルキーが形成されている。セルゲイは、入学早々、彼らから荒々しい洗礼を受ける。衆人環視のなかで、数人の屈強な男たちを相手に殴り合いになるが、一人で応戦したセルゲイは、一目置かれ、徐々に組織の中でより高いポジションを獲得していく。[プレスより]
ウクライナ出身の新鋭ミロスラヴ・スラボシュピツキー監督の長編デビュー作です。すべての登場人物が聾唖者で、コミュニケーションは手話のみで表現され、字幕も音楽も存在しないという革新的かつ衝撃的な作品です。この映画は、同時期に公開になるアンジェイ・ヤキモフスキ監督の『イマジン』(12)と比較してみるとさらに興味がふくらむと思います。二作品は聴覚や視覚に対するアプローチがまったく対照的で、それぞれに独自の世界を切り拓いているからです。
[以下、本作のレビューになります]
ウクライナの新鋭ミロスラヴ・スラボシュピツキー監督のデビュー作『ザ・トライブ』には、台詞も音楽も字幕も吹き替えもない。登場人物はすべて聾唖者で、コミュニケーションは手話だけで表現される。それでも私たちがその世界に引き込まれるのは、監督の関心と無関係ではない。
彼は聾唖者の世界を掘り下げようとしたわけではない。彼はサイレント映画に強い愛着を持っていたが、形式に縛られるのではなく、リアルな人間ドラマを通してその美学に迫ることを望み、聾唖者の世界にたどり着いた。だからこの映画では、どこにでもあり得そうな若者たちの物語が描かれる。
主人公の若者セルゲイが入学した聾唖者専門の寄宿学校では、犯罪や売春を行なう組織が陰で幅を利かせている。入学早々、手荒な洗礼を受けても怯まなかったセルゲイは、組織に受け入れられ頭角を現すが、売春婦のひとりでボスの愛人でもあるアナに恋をし、彼女にのめり込んでいく。
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