南アフリカ共和国出身の新鋭ニール・ブロムカンプが母国を舞台に作り上げたSF映画『第9地区』は、その独創性がアメリカで大きな注目を浴び、第82回アカデミー賞で4部門にノミネートされた。
28年前、南アのヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船が現れ、衰弱したエイリアンの集団が難民キャンプ“第9地区”に収容される。だが次第に市民との対立が表面化するようになり、エイリアンを市内の第9地区から僻地にある第10地区に移住させる計画が動き出す。
ブロムカンプ監督は、大胆な発想と表現で他者との関係というテーマを掘り下げていく。まず、昆虫と甲殻類をヒントに、誰もが嫌悪感をもよおすような不気味なエイリアンを生み出す。そして、南アの歴史や現状を巧妙に埋め込んだもうひとつの世界を作り上げる。この映画は、実際に起こったふたつの出来事が土台になっていなければ、おそらく平凡なB級SF映画になっていただろう。
ひとつは、かつてケープタウンに実在した“第6地区”の悲劇だ。南ア出身のピアニスト、アブドゥラー・イブラヒム(ダラー・ブランド)もトランペッター、ヒュー・マセケラもそれをタイトルにした曲を書いている。有色人種が文化交流を繰り広げるコミュニティだった第6地区は、60年代にその住人たちが強制的に不毛な郊外地域に追いやられ、アパルトヘイトを象徴する白人専用地域に変えられた。1979年生まれのブロムカンプ監督は、間違いなくその歴史を学んでいる。“第9地区”という映画のタイトルが、第6地区からきていることは容易に察することができる。
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◆スタッフ◆ |
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監督/脚本 |
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ニール・ブロムカンプ
Neill Blomkamp |
脚本 |
テリー・タッチェル
Terri Tatchell |
製作 |
ピーター・ジャクソン、キャロリン・カニンガム
Peter Jackson, Carolynne Cunningham |
撮影 |
トレント・オパロック
Trent Opaloch |
編集 |
ジュリアン・クラーク
Julian Clarke |
音楽 |
クリントン・ショーター
Clinton Shorter |
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◆キャスト◆ |
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ヴィカス・ヴァン・ダー・マーウィ |
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シャルト・コプリー
Sharlto Copley |
クーバス大佐 |
デヴィッド・ジェームズ
David James |
クリストファー・ジョンソン |
ジェイソン・コープ
Jason Cope |
タニア・ヴァン・ダー・マーウィ |
ヴァネッサ・ハイウッド
Vanessa Haywood |
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(配給:ワーナー・ブラザース映画) |
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