[ストーリー] スペインのマドリードでひとりで暮らしているジュリエッタは、美しく洗練された容姿の中年女性だが、自分を心から愛してくれている恋人ロレンソにも打ち明けていない苦悩を内に秘めていた。
そんなある日、ジュリエッタは偶然再会した知人から「あなたの娘を見かけたわ」と告げられ、目眩を覚えるほどの衝撃を受ける。ひとり娘のアンティアは、12年前に理由さえ語らぬままジュリエッタの前から突然消えてしまったのだ。
最愛の娘をこの手で抱きしめたい。母親としての激情に駆られたジュリエッタは、心の奥底に封印していた過去と向き合い、今どこにいるかわからない娘に宛てた手紙を書き始めるのだった――。[プレスより]
[以下、レビューになります]
ペドロ・アルモドバルの新作『ジュリエッタ』は、マドリードに暮らす中年女性ジュリエッタが、新たな人生を開くために、恋人とポルトガルに旅立つ準備をするところから始まる。ところが、街角で偶然再会した知人から、彼女の娘をイタリアで見かけたと告げられ、激しく動揺する。
娘のアンティアは、12年前に突然家を出て、行方知れずになっていた。過去と向き合う決心をしたジュリエッタは、恋人に別れを告げ、娘への手紙を綴りだす。30年前、25歳の彼女は、夜行列車で出会ったショアンという漁師と恋に落ちるが、その先に悲劇が待ち受けていた。
この新作は『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ボルベール<帰郷>』の系譜に連なる作品といえるが、見所はそれだけではない。ドラマを構成する細部がヒッチコックを連想させるのだ(アルモドバルは『ペドロ・アルモドバル 愛と欲望のマタドール』のなかで、「彼(ヒッチコック)の映画を何度も繰り返し見直して、ひとつひとつの映像の背後に、ものすごい才能を発見したんだ」と語っている)。 |