ラテンアメリカ 光と影の詩
El Viaje


1992年/アルゼンチン=フランス/カラー/140分/ヴィスタ/ドルビー
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(初出:不詳)

父親的な支柱を失って迷走するラテン・アメリカ

 『ラテンアメリカ 光と影の詩』は、『タンゴ―ガルデルの亡命』『スール その先は…愛』で知られるアルゼンチン出身の監督フェルナンド・E・ソラナスが、祖国とラテン・アメリカへの熱い想いを映像に刻み込んだ92年のロード・ムービーだ。

 南米の最南端に位置するフエゴ島ウスワイアで、希望も出口も日々を送る少年マルティンは、離婚して異国で暮らす父親を探し出すために、自転車で南米大陸縦断の旅に出る。その旅は単なる地理的な移動にはとどまらない。

 マルティンは、ソラナス監督が自在に紡ぎ出すマジック・リアリズム的な世界のなかで、歴史の扉を開き、苛酷な現実を目の当たりにする。旅の途中で父親が作った絵本の物語の世界に何度となく迷い込み、父親の体験や記憶、悲劇的な略奪の歴史を身近なものに変えていく。

 さらに、大洪水で水没しつつあるブエノスアイレスや集金トラックが走り回るペルー、ベルトが身体を締め付ける衣服を人々に強制しているブラジルといった象徴的な世界に踏み込むことによって、疲弊する社会や腐敗する政治、対外債務の重圧といった現実の目撃者となるのだ。

 そんな旅の終わりは何とも印象深い。父親探しの旅の果てには、父親的な支柱を失って迷走するラテン・アメリカを再認識したところからその未来を見つめようとする意志が浮かび上がってくるからだ。

 また、これまで音楽を通してソラナス作品の魅力の一端を担ってきたピアソラの遺作であることもこの作品を忘れがたいものにしている。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/音楽   フェルナンド・E・ソラナス
Fernando E. Solanas
撮影 ロベルト・マテオ
Roberto H. Mateo
編集 アルベルト・ボレロ、ジャクリーン・メピエル
Alberto Borello, Jacqueline Meppiel
音楽 エグベルト・ジスモンチ、アストル・ピアソラ
Egberto Gismonti, Astor Piazzolla
 
◆キャスト◆
 
マルティン   ウォルター・キロス
Walter Quiros
母ヘレナ ドミニク・サンダ
Dominique Sanda
“恋の使者”ビダラ ソレダ・アルファロ
Soledad Alfaro
恋人ビオレタ クリスティーナ・ベセラ
Cristina Becerra
父ニコラス マック・ベルマ
Marc Berman
パギンホ シキニョ・ブランダン
Chiquinho Brandao
亡命チリ人の船頭ボガ フランクリン・カイセド
Franklin Caicedo
“希望の星”ティト カルロス・カレラ
Carlos Carella
考古学者ジャナイーナ アンジェラ・コレリア
Angela Correa
ペルー人の少女ワイタ リリアナ・フローレス
Liliana Flores
祖母 フアナ・イダルゴ
Juana Hidalgo
父の友人ファウスティーノ フスト・マルチネス
Justo Martinez
トラックの運転手アメリコ キケ・メンディベ
Kike Mendive
親友パブロ フィト・パエス
Fito Paez
ガリード校長 エドゥアルド・ロホ
Eduardo Rojo
ラナ博士 アティリオ・ベロネリ
Atilio Veronelli
-
(配給:ヘラルド・エース、日本ヘラルド映画)
 

 


(upload:2013/01/06)
 
 
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