[Introduction] 『戦場のピアニスト』のロマン・ポランスキー監督の最新作は、歴史的冤罪事件“ドレフュス事件”の映画化。巨大権力と闘った男の不屈の信念と壮絶な逆転劇を描きベネチア国際映画祭では銀獅子賞を受賞。本国フランスでは、第45回セザール賞で3部門を受賞しNo.1大ヒットを記録した。
当時のフランスに、国家の土台を揺るがす深刻な分断をもたらしたこの事件。監督は、いわれなき罪を着せられたドレフュスと、彼を救い世に真実を知らしめようとする主人公ピカールの壮絶な運命を描出。その圧倒的なまでにサスペンスフルで、心揺さぶるストーリー展開は、衣装や美術などのあらゆる細部を突きつめた重厚なビジュアルと相まってひとときも目が離せない。
原作小説と共同脚本を手がけたのは、2010年の『ゴーストライター』以来のコラボレーションとなるロバート・ハリス。ピカールを演じるのは、『アーティスト』でアカデミー賞主演男優賞に輝いたジャン・デュジャルダン。『グッバイ・ゴダール!』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のルイ・ガレルが冤罪被害者ドレフュスに扮し、グレゴリー・ガドゥボワ、マチュー・アマルリック、メルヴィル・プポー、ヴァンサン・ペレーズ、ポランスキーの公私にわたるパートナーのエマニュエル・セニエといったフランス映画界のスターががっちり脇を固めている。(プレス参照)
[Story] 1894年、ユダヤ系の陸軍大尉アルフレッド・ドレフュスが、ドイツに軍事機密を流した容疑でパリ軍法会議にかけられる。反逆罪で終身刑を宣告されたドレフュスは、軍籍を剥奪され、仏領ギアナの悪魔島に収監された。
ところがドレフュスの元教官でもある防諜の責任者ジョルジュ・ピカール中佐は、ドレフュス有罪の決め手となった文書が別人によって書かれたことを示す衝撃的な証拠を発見。ドレフュスの無罪を確信したピカールは上官に対処を迫るが、国家的なスキャンダルを恐れて隠蔽をもくろむ上層部に左遷を命じられてしまう。やがて1897年、ドレフュスの再審を願うピカールは、おのれの信念に従ってパリに戻り、作家のエミール・ゾラらに支援を求める。しかし、その行く手には腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いが待ち受けていた...。
ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● 19世紀フランスに深刻な分断を引き起こしたドレフュス事件|『オフィサー・アンド・スパイ』 |