[Introduction] クエンティン・タランティーノが”シャロン・テート事件”にインスパイアされて作り上げた虚実入り混じる1969年・ハリウッドの物語。主人公の落ち目の俳優リックと専属スタントマンのクリフを演じるのは、初共演となるレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピット。他に、マーゴット・ロビー、マーガレット・クアリー、ダコタ・ファニング、ブルース・ダーン、アル・パチーノ、カート・ラッセル、マイケル・マドセンなど豪華キャストが共演。
[Story] リック・ダルトンはピークを過ぎたTV俳優。映画スターへの道がなかなか拓けず焦る日々が続いていた。そんなリックを支えるクリフ・ブースは、彼に雇われた付き人でスタントマン、そして親友でもある。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに神経をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。この二人の関係は、ビジネスでもプライベートでもまさにパーフェクト。しかし、時代は徐々に彼らを必要とはしなくなっていた。そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート夫妻が越してくる。落ちぶれつつある二人とは対照的な輝きを放つ二人。この明暗こそハリウッド。リックは再び俳優としての光明を求め、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが――。
そして、1969年8月9日――それぞれの人生を巻き込み映画史を塗り替える【事件】は起こる。(プレス参照)
[以下、本作のレビューになります]
1969年8月、ロマン・ポランスキーの妻で駆け出しの女優だったシャロン・テートが、カルト集団マンソン・ファミリーによってハリウッドの自宅で惨殺された。クエンティン・タランティーノの新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、この悲劇にインスパイアされたおとぎ話だ。主人公は、ポランスキー邸の隣に住むリック・ダルトンと相棒のクリフ・ブース。1950年代にテレビ西部劇で俳優と専属スタントマンとして成功を収めた彼らは、いまでは落ちぶれ、輝くシャロンとは対照的に時代から取り残されようとしている。
では、そんなふたりがどうして事件に関わることになるのか。リックが彼女の隣人だったからだけではない。見逃せないのは、実際にマンソン・ファミリーが根城にしていたスパーン・ランチのエピソードが盛り込まれていることだ。そこには西部劇のセットがあり、昔は撮影が行われていた。
タランティーノは、この場所から主人公たちのキャラクターを思いついたのかもしれない。かつてリックをスターにしたTV西部劇がそこで撮影されたことにすれば、マンソン・ファミリーと接点ができるからだ。本作では、ヒッピーの娘と出会ったクリフが、久しぶりにスパーン・ランチを訪れ、怪しげなヒッピーの集団が住み着いていることを知り、旧知の間柄であるオーナーの安否を確認しようとする。ヒッピーに乗っ取られたそのスパーン・ランチは、ヒッピー文化に席巻され、旧来のスタジオシステムが揺らぐハリウッドを象徴してもいる。 |