ナイル殺人事件
Death on the Nile


2022年/アメリカ/英語・フランス語/カラー/127分/スコープサイズ
line
(初出:)

 

 

多様性を反映した登場人物たちのアリバイだけでなく愛憎を掘り下げ
探偵ポワロの頭脳だけでなく感情、さらには口ひげの起源まで描き出す

 

[Introduction] 美貌の資産家リネットが、ナイル川を行く豪華客船の船室で殺害される。客船には、リネットを殺害する動機をもった者が何人も乗船していた。ミステリーの女王、アガサ・クリスティの代表作『ナイルに死す』の再映画化。シェイクスピア作品から『マイティ・ソー』、『シンデレラ』まで幅広いジャンルで演出の才能を発揮するケネス・ブラナーが、『オリエント急行殺人事件』につづいて監督を手がけ、名探偵エルキュール・ポワロを演じる。今回は、ポワロのトレードマークである口ひげの起源や彼が胸に秘める喪失の痛みも描かれる。

 資産家リネットを『ワンダーウーマン』のガル・ガドット、彼女の結婚相手のサイモンを『君の名前で僕を呼んで』のアーミー・ハマー、事件のキーパーソンになるジャクリーンをNetflixシリーズ「セックス・エデュケーション」のエマ・マッキー、『オリエント急行殺人事件』につづいて再び登場するブークをトム・ベイトマン、ブークの母親ユーフェミアを『アメリカン・ビューティー』『キッズ・オールライト』アネット・ベニングが演じ、他に『ブラックパンサー』のレティーシャ・ライト、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』のアリ・ファザル、「ゲーム・オブ・スローンズ」のローズ・レスリー、『ワイルド・ローズ』のソフィー・オコネドーら豪華キャストが集結。(プレス参照)

[Story] 莫大な遺産を相続したアメリカ人のリネットは、親友ジャクリーンからハンサムな婚約者サイモンを紹介されるが、親友から彼を奪い、結婚相手に決めてしまう。リネットとサイモンはハネムーンでエジプトを訪れるが、ゆく先々にジャクリーンが現れる。そして、リネットとサイモンが乗船する豪華客船カルナック号で、ある夜、事件が起こる。展望室で逆上したジャクリーンが、サイモンの脚をピストルで撃ってしまう。ケガを負ったサイモンを医師のウィンドルシャムが介抱する一方、取り乱したジャクリーンには看護師のバワーズが一晩中、付きそう。翌朝、メイドのルイーズが、リネットの客室で射殺された彼女を発見する。だが、リネットを恨むジャクリーンにはアリバイがあった。探偵ポワロは、他の乗客たちにも様々な動機があることを知る。

[以下、短いコメントです]

 ジョン・ギラーミン監督が『ナイルに死す』を映画化した1978年製作の『ナイル殺人事件』の上映時間は140分で、ケネス・ブラナー監督が映画化した本作は127分。しかも本作の場合には、探偵エルキュール・ポワロの口ひげの起源やかつて愛した女性に関わるエピソードまで盛り込まれている。ギラーミン版が時間を割いているのは、疑わしい乗客たちに対するポワロの推理を繰り返し映像で再現しているからだろう。ミステリーを重視すれば、動機やアリバイが中心になるが、ブラナー監督はその部分を簡潔にまとめ、ポワロ個人が胸に秘めた喪失の痛みとも結びつく乗客たちの愛憎を掘り下げ、濃密なヒューマンドラマに仕立て上げている。


◆スタッフ◆
 
監督   ケネス・ブラナー
Kenneth Branagh
脚本 マイケル・グリーン
Michael Green
原作 アガサ・クリスティ
Agatha Christie
撮影 ハリス・ザンバーラウコス
Haris Zambarloukos
編集 ウナ・ニ・ドンガイル
Una Ni Dhonghaile
音楽 パトリック・ドイル
Patrick Doyle
 
◆キャスト◆
 
エルキュール・ポワロ   ケネス・ブラナー
Kenneth Branagh
リネット ガル・ガドット
Gal Gadot
サイモン アーミー・ハマー
Armie Hammer
ジャクリーン エマ・マッキー
Emma Mackey
ブーク トム・ベイトマン
Tom Bateman
ユーフェミア アネット・ベニング
Annette Bening
ウィンドルシャム ラッセル・ブランド
Russell Brand
アンドリュー アリ・ファザル
Ali Fazal
バワーズ ドーン・フレンチ
Dawn French
ルイーズ ローズ・レスリー
Rose Leslie
サロメ ソフィー・オコネドー
Sophie Okonedo
マリー ジェニファー・ソーンダース
Jennifer Saunders
ロザリー レティーシャ・ライト
Letitia Wright
-
(配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)
 

 

 

(upload:2022/05/01)
 
 
《関連リンク》
ケネス・ブラナー 『ベルファスト』 レビュー ■
メイヘム・パーヴァを応用して、家族や階級に揺さぶりをかける
――『ゴスフォード・パーク』と『8人の女たち』をめぐって
■
カズオ・イシグロ・インタビュー 『わたしたちが孤児だったころ』 ■

 
 
amazon.comへ●
 
ご意見はこちらへ master@crisscross.jp