[ストーリー] ベテランの人気SF作家デヴィッドは、講演のために恋人のジェーンと地中海のマヨルカ島にやって来る。講演後、彼はジェーンにプロポーズし、彼女も承諾するが、その晩ホテルで悲劇が起こる。ジェーンが突然、バルコニーから飛び降り、病院に搬送されるものの死亡する。
同じ頃、やはりマヨルカ島を訪れていたシルビアが、<暗い日曜日(Gloomy Sunday)>が流れる謎の電話を受けたあと、ホテルから飛び降りるが、一階のカフェの天幕のおかげで九死に一生を得る。傷心のデヴィッドと何者かに狙われるシルビアは、偶然に空港で出会い、なにが起こっているのかを調べ出す。そして、事件の背後である科学者が糸を引いていることを知るが――。
異色のファンタジー『クイーン&ウォリアー(El Corazon del Guerrero)』(99)で注目されたスペインの異才ダニエル・モンソンの長編第3作です。“ハンガリーの自殺ソング”として知られる<暗い日曜日(Gloomy Sunday)>にインスパイアされていることは間違いないでしょう。ちなみに、舞台となるマヨルカ島はモンソン監督の生まれ故郷でもあり、自分がよく知る、お気に入りの場所で撮影したのではないかと想像されます。
モンソン監督の作品では、異なるふたつの世界の境界が鍵を握っています。この映画では、作家デヴィッドが生み出す虚構と、科学者コヴァックが生み出す現実が、ふたつの世界にあたります。
事件を調べ出したデヴィッドは、その状況が自分のデビュー作『Gloomy Sunday』の内容に酷似していることに気づきます。科学者コヴァックはある目的でそれを現実に変えようとします。モンソン監督が関心を持っているのは、そんな虚構と現実というふたつの世界の境界が崩壊したときになにが起こるのか、これまで虚構に守られてきた主人公がどんな行動をとるのかというところにあります。
▼ダニエル・モンソン監督最新作『エル・ニーニョ(DVDタイトル:ザ・トランスポーター)』