[ストーリー] エル・ニーニョは、英国の海外領土ジブラルタルと国境を接するラ・リネア・デラ・コンセプシオンでボートの修理工をしている若者だ。そんなニーニョに友だちのエル・コンピが金儲けの話を持ちかけ、彼をモロッコ移民の若者ハリルに会わせる。ハリルはふたりを、麻薬取引を仕切るおじラシッドのもとに案内し、彼らはモロッコから高速ボートで麻薬を運ぶ仕事を請け負う。
ところが、本物の取引のおとりに使われたことを知ったニーニョとコンピは、ラシッドに頼らず、自分たちで取引を仕切りだす。ニーニョは、海峡をボートで往復するうちに、モロッコに住むハリルの姉アミナと恋に落ちる。しかし、危険な取引に手をだしたことから、彼らは窮地に陥る。
一方、ベテラン刑事ヘススと相棒のエバは、ジブラルタル海峡をめぐる麻薬密売ルートを追い、英領ジブラルタルに住むエル・イングレスという男を標的として、2年にわたる内偵を進めてきた。そして、動かぬ証拠をつかめると踏んだ彼らは、大きな賭けに出るが、それは罠だった。ヘススは領海を監視するヘリのパイロットに左遷させられるが、密かに捜査をつづけ、やがてニーニョに目をつける。
前作『プリズン211(第211号監房)』(09)で大きな成功を収めたダニエル・モンソン監督の長編第5作です。本国スペインでは大ヒットしたようです。
モンソン監督は、異なるふたつの世界の境界に強い関心を持ち、そこから独自の世界を切り拓いていきます。『イレイザー』(06)では、SF小説という虚構と現実の境界が、『プリズン211』(09)では、刑務所における職員と囚人の境界が鍵を握っていました。この新作では、アフリカ大陸とヨーロッパを隔てるわずか16キロの海であるジブラルタル海峡や、英領ジブラルタルとラ・リネア・デラ・コンセプシオンを隔てる国境が“境界”となります。
この映画では、エル・ニーニョやエル・コンピを主人公にした物語と、ヘススやエバを主人公にした物語が並行して描かれ、最後に絡み合うことになります。双方にとって、境界が生み出す距離や重みの変化はまったく対照的です。
映画の導入部では、ラ・リネア・デラ・コンセプシオンに暮らすニーニョが、マリンジェットでモロッコまでひとっ走りし、その土産としてコンピにアフリカの石を渡します。彼にとってふたつの世界はそれほど近いものであるため、麻薬取引の深みに容易にはまっていきます。 |