パク・チャヌク監督のハリウッド・デビュー作『イノセント・ガーデン』のヒロインは、研ぎ澄まされた感覚を持つ少女インディア・ストーカー。彼女が18歳になったその日、謎めいた鍵が届き、ただ一人だけ心を開いていた最愛の父が急死する。ともに残された美しい母エヴィ(イヴリン)とはなにひとつ分かり合えない。そして葬儀の日、行方不明だった叔父チャーリーが突然現れ、不可思議な出来事が次々に起こりだす。
『復讐者に憐れみを』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』という“復讐三部作”や『渇き』を撮ったパク・チャヌクであれば、ハリウッドという不慣れな環境でも、自身の脚本ではないとしても健闘するだろうとは思っていた。
だが、それにしても、細部まで徹底的にこだわり抜いた揺るぎない世界を作り上げているのには驚かされた。ただ視覚に訴えるのではなく、触感まで生々しく伝わってくるような映像と音響の効果が際立つ。もちろんパク監督の右腕ともいうべきチョン・ジョンフンが撮影監督を務めていることは大きいが、決してそれだけではない。
パク監督の作品では、独自の美学に貫かれた造形や暴力描写が際立つが、“過去”も同様に重要な位置を占めている。主人公が向き合う過去には冷酷な罠や秘密が隠され、そんな過去と現在のねじれが主人公の人生を大きく変えていく。この新作も例外ではない。
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