ナッシュヴィルを拠点にし、ラムチョップ(Lambchop)やシルヴァー・ジューズ(Silver Jews)で活動し、ヒス・ゴールデン・メッセンジャー、ローラ・キャントレル、チャーリー・ルーヴィン、ボニー“プリンス”ビリーらと共演してきたギタリスト/コンポーザー、ウィリアム・タイラー。
『デザレット・キャニオン/Deseret Canyon』は、2008年にペーパー・ハッツ(The Paper Hats)名義でリリースしていたギター・ソロ中心のコレクションを、ウィリアム・タイラー名義で再リリースしたアルバムです。タイラーのソロ・デビューは、2010年の『ビホールド・ザ・スピリット/Behold the Spirit』なので、それ以前の彼のギター・ワールドを確認することができます。
Deseret Canyon by William Tyler
インストゥルメンタルのサウンドスケープは抽象的な世界と感じられるかもしれませんが、タイラーの場合は具体的な世界からインスピレーションを得ています。彼が強い関心を持っているのは、失われた文化や世界であり、このアルバムも例外ではありません。
“デザレット”とは、モルモン教の大管長ブリガム・ヤングが考案した文字の名前であり、モルモン書からとられたこの名称はミツバチを意味しています。またこの名前は、モルモン教徒が作ろうとした州の名前でもあります。
それは、もしかするとあり得たかもしれない未来であり、タイラーはジャンルに縛られることなく、あり得たかもしれないサウンドスケープを次々と切り拓いているともいえます。また、ネイサン・ボウルズが失った記憶をインスピレーションの源として、独自のドローン・ミュージックを紡ぎ出していることと比較してみるのも興味深く思えてきます。
William Tyler - guitar; Paul Niehaus - pedal steel guitar(4,7)