ターナー、光に愛を求めて:OST / ゲイリー・ヤーション
Mr. Turner: Original Soundtrack / Gary Yershon (2014)


 
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(初出:)

 

 

19世紀という時代背景にとらわれず
画家ターナーの感性と響き合う音楽の魅力

 

 『秘密と嘘』、『ヴェラ・ドレイク』のマイク・リー監督が、英国史上最高の画家ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの生涯の最後の25年間を描いた『ターナー、光に愛を求めて』(14)のオリジナル・サウンドトラックです。ターナーを演じたティモシー・スポールは、カンヌ国際映画祭主演男優賞を始め数々の賞に輝いています。

[ストーリー] 19世紀、イギリス。著名な天才画家ターナーは、夏は新たなインスピレーションを求めて旅をし、冬はアトリエで創作に没頭する日々を送っていた。そんなターナーを助手として支えていた最愛の父が、病に倒れ帰らぬ人となってしまう。悲しみから逃れるように訪れた港町で、ターナーは生き方を変えることになる“ある再会”を果たす。やがてターナーの並外れた才能は時代の先を行過ぎるようになり、ロイヤル・アカデミーや世間でも評価が真っ二つに分かれるようになるのだが――。[プレスより]

 サウンドトラックを手がけたのは、映画、TV、演劇、ダンスなどの音楽で活躍するイギリス人の作曲家ゲイリー・ヤーション。マイク・リー監督とのコラボレーションは、『トプシー・ターヴィー』(99)から始まり、これが5作目になります。

 プレスに収められたインタビューのなかで、マイク・リーは音楽について以下のように語っています。「私がゲイリー・ヤーションに言ったことは、偽者の時代物の音楽にはするな、ターナーの絵からのセンス、雰囲気から作ってくれということでした。そして、あのサクソフォンがメインになった独特の音楽ができました」

 ということでこのサウンドトラックには、時代背景を直接的に連想させるような要素はまったく盛り込まれていません。ストリングスのアンサンブルを基調に、サキソフォン・クァルテット、クラリネット、フルート、そしてハープが絡み合い、ターナーの絵画の光を意識したかのように、モチーフが微妙に変化していく繊細な音楽になっています。時おりジャズの要素も感じられます。

 それを単調と感じる人もいるでしょうが、私はかなり気に入っています。ちなみにこの音楽は、アカデミー賞にもノミネートされています。あと、アルバムの終わりのほうに、別の短編映画『A Running Jump』の音楽も収録されています。こちらは、パーカッションやホーンアンサンブルなど、ラテン・フレイバーが際立つ軽快な音楽になっています。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Mr. Turner
02. Colour Shop And Market
03. Preparations
04. To Petworth
05. Margate Sands
06. Long Time Ago
07. Ailing
08. Mourning
09. Quiet House
10. Walks
11. Varnishing Day
12. Action Painting
13. Lashed To The Mast
14. Margate Again
15. The Fighting Temeraire
16. Steam Railway
17. Critics
18. Low
19. On The Jetty
20. Old And New
21. End Credits
22. A Running Jump Part 1: A Running Jump - Fit 'N' Fancy - In The Cab / At The Garage - Sporting Spirit
23. A Running Jump Part 2: Billy
24. A Running Jump Part 3: On The Run - In The Swim
25. A Running Jump Part 4: On The Spot
26. A Running Jump Part 5: Hard Sell - Drive, Swim, Sell
27. A Running Jump Part 6: Cash - Sold
28. A Running Jump Part 7: Goals
29. A Running Jump Part 8: Fitter 'N' Fancier -- Taking Flight - The Final

◆Personnel◆

Music composed by Gary Yershon. Conducted by Terry Davies. Orchestrations by Gary Yershon. Recorded and mixed by Nick Taylor. Edited by Andrew Glen. Album produced by Gary Yershon

(Varese Sarabande)
 


(upload:2015/04/19)
 
 
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