フロム・ザ・リバー・トゥ・ジ・オーシャン
/ フレッド・アンダーソン&ハミッド・ドレイク
From the River to the Ocean / Fred Anderson & Hamid Drake (2007)


 
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(初出:)

 

 

シカゴの音楽シーンを牽引してきた盟友の再会
そしてジョシュア・エイブラムスのゲンブリ・デビュー

 

 もちろん主役は、フレッド・アンダーソンとハミッド・ドレイクですが、あとで振り返ってみたときに別の意味を持つアルバムでもあると思います。それは、ショシュア・エイブラムスが、北アフリカの伝統音楽グナワで使われる弦楽器ゲンブリを演奏しているということです。ゲンブリの演奏が珍しいということではありません。

 エイブラムスは1998年に2、3週間ほどモロッコに滞在しました。彼はゲンブリを耳にしたことはありましたが、詳しくは知りませんでした。そしてモロッコで現物を目にし、わずかながら演奏法を学び、アメリカに持ち帰りました。それからこの楽器に対する試行錯誤をつづけていくことになりますが、そのときに関心を持ち、エイブラムスを励ましたのがハミッド・ドレイクでした。

 ドレイクに力づけられたエイブラムスはさらに演奏に打ち込むようになり、このアルバムで、ベースとともにゲンブリも演奏することになりました。ちなみに、ゲンブリを弾いているのは、4曲目のタイトルナンバー<From the River to the Ocean>と5曲目の<Sakti / Shiva>です。その前の3曲ではベースを弾いているので、比較してみると興味深いです。

 このレコーディングを行ったことで、エイブラムスのヴィジョンはより明確なものになり、彼の創作のなかでゲンブリが重要な位置を占めるようになります。そうした観点からも意味があるアルバムといえます。この後、エイブラムスは、2010年にゲンブリを中心にしたアルバム『ナチュラル・インフォメーション/Natural Information』をリリースし、ナチュラル・インフォメーション・ソサエティというユニットでサウンドを発展させていきます。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Planet E
02. Strut Time
03. For Brother Thompson
04. From The River To The Ocean
05. Sakti / Shiva

◆Personnel◆

Fred Anderson - saxophone; Hamid Drake - drums, frame drum; Harrison Bankhead - bass, cello, piano; Josh Abrams - bass, guimbri; Jeff Parker - guitar;

(Thrill Jockey)
 

 また、ドレイクがエイブラムスを励まし、このアルバムで濃密なコラボレーションを繰り広げることができたのは、彼が以前にゲンブリ奏者のマフムード・ガニア(ギニア)と共演していることと無関係ではないでしょう。ペーター・ブロッツマンとドレイクとガニアのトリオのライブ『Wels Concert』で、そのコラボレーションを確認することができます。

 

(upload:2016//)
 
 
《関連リンク》
From the River to the Ocean | Thrill Jockey
The Panoramic Songscape: Joshua Abrams'
Natural Information Society | St. Louis Magazine
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