エコーロケーションズ:キャニオン
/ アンドリュー・バード
Echolocations: Canyon / Andrew Bird (2015)


 
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(初出:)

 

 

ユタ州コヨーテ・ガルチの峡谷へ
即興演奏による自然との対話と調和

 

 ロサンゼルス(以前はシカゴだった)を拠点に活動するマルチインストゥルメンタリスト、シンガー・ソングライターのアンドリュー・バード。新作『エコーロケーションズ:キャニオン』は、彼が新たにスタートさせた音楽と映像と空間のユニークなコラボレーションである“エコーロケーションズ”シリーズの第一弾になる。シリーズは5つのテーマに分けられ、第一弾の「キャニオン(Canyon)」から、「リヴァー(River)」「シティ(City)」「レイク(Lake)」「フォレスト(Forest)」へとつづいていく予定だ。

 エコーロケーション(反響定位と訳される)という言葉については、ノルウェーのサウンド・アーティスト、ヤナ・ヴィンデレン(Jana Winderen)のアルバム『エナジー・フィールド』(11)や『アウト・オブ・レンジ』(14)を取り上げたときに、触れたことがある。コウモリ、イルカ、マッコウクジラなど、動物が音や超音波を発し、その反響によって周囲の環境を認識することを意味する。ちなみに、『アウト・オブ・レンジ』は、コウモリやイルカ、その他の生き物たちが使う超音波やエコーロケーションを音源として作り上げられた作品だった。

 また、エコーロケーションは、視覚障害者が周囲の環境を認識する手段にもなる。ポーランドの異才アンジェイ・ヤキモフスキ監督の映画『イマジン』(12)[2015年4月25日(土)公開予定]に登場する主人公イアンは、盲目の子供たちにエコーロケーション(反響定位)の方法を教えるインストラクターで、指や舌を鳴らすことで起こる反響を通して周囲の環境を把握し、白杖なしで移動する。この映画では、エコーロケーションをめぐるドラマを通して、人間の想像力や観察力が掘り下げられていく。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Sweep The Field
02. Groping The Dark
03. Rising Water
04. Antrozous
05. The Return of Yawny
06. Before The Germans Came
07. The Canyon Wants to Hear C Sharp

◆Personnel◆

Andrew Bird - violin, etc;

 
(Wegawam Music Co / Virtual)
 

 では、アンドリュー・バードの場合は、どのような意味でエコーロケーションをシリーズのタイトルにしているのか。彼は4歳でヴァイオリンを始めたが、そんな子供の頃から声や口笛、ヴァイオリンで異なる空間をとらえる経験を積んできた。そしてツアーでも、自分の音楽とそれぞれの会場という空間の調和を探求してきた。このシリーズでは、そんな試みや営みを発展させ、自然を中心に異なる5つの空間に踏み出すことになる。

 その第一弾『エコーロケーションズ:キャニオン』では、バードが映像作家のタイラー・マンソンとともにユタ州南部、コヨーテ・ガルチの峡谷を旅し、環境にインスパイアされ、環境と調和するインプロヴィゼーションを繰り広げ、独自のサウンドスケープを生み出している。

 実話に基づくダニー・ボイル監督の『127時間』で、主人公アーロン・ラルストンが訪れるのはユタ州のブルー・ジョン・キャニオンという設定になっていた。タイラー・マンソンが記録した映像には、この映画と似た光景が広がっている。

 このテキストは書きかけです。つづきは近いうちに。


(upload:2015/03/07)
 
 
《関連リンク》
Andrew Bird the official Site
ヤナ・ヴィンデレン 『Out of Range』 レビュー ■
ヤナ・ヴィンデレン 『Energy Field』 レビュー ■
リチャード・スケルトン 『Landings』 レビュー ■
アンジェイ・ヤキモフスキ 『イマジン』 レビュー ■
ダニー・ボイル 『127時間』 レビュー ■
   
 
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