■20キロ圏内での体験とタイトル『希望の国』
――以前インタビューしたとき、伝統的な家族や伝統的な日本映画の流れを疑っているとおっしゃっていて、実際に壊れた家族を描いたり家族の裏側を暴いてこられましたが、『希望の国』の家族像はこれまでと違いますね。
「テーマが原発だから、ほかを際立たせる必要はないんです。家族問題を抱えたところに原発が襲ってきたら、どっちがテーマかわかんない(笑)。だから伝統的っていうか、いわゆる日本的ないい家族にしたんです。僕の意識としては“伝統的な日本映画のなかの家族”を壊したい。日本映画は何十年か遅れていると思ってるんで。
絵画で言えば、海外ではどんどん進んだ画風で描かれてるのに、日本ではいつになっても赤富士を描いて「いい絵だ」って言ってるみたいな(笑)。そういうのを壊したくてずっとやってきましたけど、この映画は逆に日本人にちゃんと見てほしいと思ったんで、あえて赤富士を描いてみた感じです」
――資金調達で海外資本の協力を得たことについてはどう考えますか。
「言ってしまえば情けないかなと思いましたよ。いろいろ事情はおありなんでしょうけど、しょせん芸能、エンタメなのかなって残念さはありました。この作品が出来たことは突破口のひとつになれたと思いますけどね。今年、原発のドラマ映画を撮ったのが僕ひとりっていうのはよくないですよ。ほかの監督にも考えてほしい。
向こうでは目の前で起こってる戦争を批判的に描いた『ハート・ロッカー』がアカデミー賞を獲るんですから、腐ってもハリウッドだなと。日本なら東宝が原発を扱った映画を撮って、それが日本アカデミー賞を獲ればいいんです。それぐらいやんない限り、日本映画はまだ閉塞状況と思いますね」
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