ウルフ・オブ・ウォールストリート
The Wolf of Wall Street


2013年/アメリカ/カラー/179分/スコープサイズ/5.1ch
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(初出:)

 

 

ジョーダン・ベルフォートの目を通して見た金融界
そこから浮かび上がるリーマン・ショック以後の視点

 

[概要] 実話に基づく『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は、異様な速さで人生を上り詰め、ノンストップの快楽を探求して失脚したジョーダン・ベルフォートを追った物語だ。彼はニューヨークのブローカーで、浮かれたブローカーたちの一団と共に、投資家から何百万もの大金を騙しとって、巨万の富を築く。映画は、ウォールストリートにやって来たまっとうな若者が、株価を吊り上げる堕落者から、IPOに悪徳業者への道を辿るジョーダンの波乱の人生に迫る。

 不正によって短期間に積み上げた大金を、ジョーダンはありとあらゆる媚薬に際限なく注ぎ込む。女、鎮静剤、ドラッグ、車、スーパーモデルの妻――野心と終わりなき物欲の伝説的な人生だ。しかし、ジョーダンの会社ストラットン・オークモントが快楽を満喫し、その高みに舞い上がっているまさにその時、SEC(証券取引委員会)とFBIは、ジョーダンの行き過ぎた王国という標的に、照準を合わせているのだった。[プレスより]

 マーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を、実話に基づく物語と表現することには若干の問題がある。たとえば、ジョーダン・ベルフォートを題材にしたノンフィクションが原作ということであれば、実話に基づくともいえる。

 だが、ベルフォート自身がその体験を綴った原作は、必ずしも事実に基づいているとはいいがたい。むしろ、彼の目にはそう見えていた世界、あるいは彼自身が語りたい物語と考えるべきだろう。だからこの映画のなかでも、成功に酔いしれるベルフォートと社員たちの世界が、フェリーニのようなシュールな祝祭の空間へと変貌を遂げるのだろう。


◆スタッフ◆
 
監督/製作   マーティン・スコセッシ
Martin Scorsese
脚本 テレンス・ウィンター
Terence Winter
原作 ジョーダン・ベルフォート
Jordan Belfort
撮影 ロドリゴ・プリエト
Rodrigo Prieto
編集 セルマ・スクーンメイカー
Thelma Schoonmaker
 
◆キャスト◆
 
ジョーダン・ベルフォート   レオナルド・ディカプリオ
Leonardo DiCaprio
ドニー・エイゾフ ジョナ・ヒル
Jonah Hill
ナオミ マーゴット・ロビー
Margot Robbie
マーク・ハンナ マシュー・マコノヒー
Matthew McConaughey
パトリック・デナム カイル・チャンドラー
Kyle Chandler
マックス・ベルフォート ロブ・ライナー
Rob Reiner
マニー・リスキン ジョン・ファヴロー
Jon Favreau
ジャン=ジャック・ソーレル ジャン・デュジャルダン
Jean Dujardin
-
(配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン)
 

  そんな人物の物語をいま映画化するのであれば、どこかにリーマン・ショック以後の視点が埋め込まれていなければならない。それがなければ、あまりにも軽薄な物語になってしまう。

 筆者は、世界を思い通りに動かしているように見えて、いつしか自身もそこに囚われ、身動きがとれなくなっていくベルフォートの姿を見ながら、ニューヨーク・タイムズのトップ記者アンドリュー・ロス・ソーキンが書いた『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』のことを連想していた。そこなかでは、巨万の富を築いたウォール街の金融エリートたちが、追いつめられ、身動きがとれなくなっていく。

 だが、スコセッシがこの本を映画化したとしても、おそらくそれほど面白い作品にはならないだろう(ちなみに、この本がテレビ映画化されたときに監督を務めたのはカーティス・ハンソンだった)。つまり、スコセッシがリーマン・ショックを描くとしたら、セックスやドラッグや名声に溺れていくベルフォートのようなキャラクターが必要になるということだ。


(upload:2014/12/31)
 
 
《関連リンク》
オリヴァー・ストーン 『ウォール街』 レビュー ■
オリヴァー・ストーン 『ウォール・ストリート』 レビュー ■
アンドリュー・ロス・ソーキン
『リーマン・ショック・コンフィデンシャル』レビュー
■
ダニ・ロドリック 『グローバリゼーション・パラドクス』 レビュー ■
サッチャリズムとイギリス映画―社会の急激な変化と映画の強度の関係 ■

 
 
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