ドルイド・ピーク(原題)
Druid Peak Druid Peak (2014) on IMDb


2014年/アメリカ/カラー/111分/
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(初出:)

 

 

生きる意味を見失ってしまった若者は
オオカミの追跡調査を通して再生を果たす

 

[ストーリー] ウェスト・ヴァージニアの炭鉱の町に暮らす高校生オーウェンは、苛立ちを抱え込み、反抗を繰り返す問題児だ。両親はとうの昔に離婚し、母親が再婚して、彼にはまだ幼い弟がいた。そんなある日、オーウェンが引き起こしたトラブルで、親友が事故死してしまう。その事件に傷ついた母親は、息子をなんとかしなければと考え、彼を疎遠になっている父親に預けることにする。

 オーウェンの父親エヴェレットは生物学者で、ワイオミングのイエローストーン国立公園で、絶滅したオオカミの再導入プログラムを進めていた。オーウェンは新しい環境にまったく関心を持っていなかったが、森で偶然にオオカミに遭遇したことで、なにかに目覚める。父親は彼にオオカミとその群れの追跡調査の方法を教える。

 生きる意味を見失っていたオーウェンは、自然や野生に触れることで、変貌を遂げていく。

 これまで助監督やプロデューサーとして活動してきたマーニ・ゼルニックの長編デビュー作です。予備知識なしに映画を観たら、女性監督の作品とは思わないかもしれません。イエローストーン国立公園では実際に1995年からオオカミの再導入プログラムが実施され、破壊された生態系を再構築するために効果をあげています。ゼルニック監督はおそらくそのプログラムをリサーチし、若者の成長の物語と巧みに結びつけています。

 オーウェンがオオカミと遭遇するまでの流れがすごくいいです。自分の過ちで友だちを亡くした彼は、その後も感情を表に出しません。父親のコテージに落ち着いた彼は、黙って銃を持ち出し、ひとりで森のなかに入っていきます。そして自分の頭に銃口をあて、自殺をはかろうとします。心のなかでは罪悪感に苛まれ、苦しんでいたのでしょう。しかし、そんな彼の前にオオカミが現われ、彼をじっと見つめます。彼はまだ再導入プログラムのことも知らないので、最初はオオカミに銃口を向けようとしますが、なにかに目覚めたように銃を下します。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   マーニ・ゼルニック
Marni Zelnick
撮影 レイチェル・モリソン
Rachel Morrison
 
◆キャスト◆
 
Owen   スペンサー・トリート・クラーク
Spencer Treat Clark
Everett アンドリュー・ウィルソン
Andrew Wilson
Zoe レイチェル・コリン
Rachel Korine
McGill ダミアン・ヤング
Damian Young
Matt ナサニエル・ブラウン
Nathaniel Brown
Dale アーマンド・シュルツ
Armand Schultz
Jillian ラナ・ジョフリー
Lanna Joffrey
-
(配給:)
 

 この映画では、再導入プログラムがいろいろな意味で、主人公の人生のメタファーになっています。このプログラムの実施にあたって地元の牧場主には疑問や抵抗があります。家畜がオオカミに襲われるリスクを背負うことになるからです。実際、家畜が餌食にもなります。だからこそ、かつてオオカミは害獣とみなされ、駆逐されました。その結果、エルクなどの動物が繁殖し、植生への被害が広がり、生態系が崩れることになりました。問題児だったオーウェンにとっては、なんとかしてオオカミを救おうとすることが、自分自身を救うことにもなります。

 さらに、オーウェンが一匹のオオカミの生と死を見つめる時間は、亡くした友人に対する喪の時間にもなります。

 オオカミの再導入プログラムについては、日本でも検討され、賛否両論が起こっていますが、この映画はそのことについて考えるヒントを与えてくれるでしょう。


(upload:2015/06/28)
 
 
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