[ストーリー] ウェスト・ヴァージニアの炭鉱の町に暮らす高校生オーウェンは、苛立ちを抱え込み、反抗を繰り返す問題児だ。両親はとうの昔に離婚し、母親が再婚して、彼にはまだ幼い弟がいた。そんなある日、オーウェンが引き起こしたトラブルで、親友が事故死してしまう。その事件に傷ついた母親は、息子をなんとかしなければと考え、彼を疎遠になっている父親に預けることにする。
オーウェンの父親エヴェレットは生物学者で、ワイオミングのイエローストーン国立公園で、絶滅したオオカミの再導入プログラムを進めていた。オーウェンは新しい環境にまったく関心を持っていなかったが、森で偶然にオオカミに遭遇したことで、なにかに目覚める。父親は彼にオオカミとその群れの追跡調査の方法を教える。
生きる意味を見失っていたオーウェンは、自然や野生に触れることで、変貌を遂げていく。
これまで助監督やプロデューサーとして活動してきたマーニ・ゼルニックの長編デビュー作です。予備知識なしに映画を観たら、女性監督の作品とは思わないかもしれません。イエローストーン国立公園では実際に1995年からオオカミの再導入プログラムが実施され、破壊された生態系を再構築するために効果をあげています。ゼルニック監督はおそらくそのプログラムをリサーチし、若者の成長の物語と巧みに結びつけています。
オーウェンがオオカミと遭遇するまでの流れがすごくいいです。自分の過ちで友だちを亡くした彼は、その後も感情を表に出しません。父親のコテージに落ち着いた彼は、黙って銃を持ち出し、ひとりで森のなかに入っていきます。そして自分の頭に銃口をあて、自殺をはかろうとします。心のなかでは罪悪感に苛まれ、苦しんでいたのでしょう。しかし、そんな彼の前にオオカミが現われ、彼をじっと見つめます。彼はまだ再導入プログラムのことも知らないので、最初はオオカミに銃口を向けようとしますが、なにかに目覚めたように銃を下します。 |