[ストーリー] 殺人課の敏腕刑事カール・マーク。ある事件で部下を失い重傷を負った彼は、復職後に新部署「特捜部Q」への転属を命じられる。“終わった”と判断された捜査報告書の整理があらたな仕事となったが、それらの資料の中には5年前に話題となった美人議員ミレーデ・ルンゴー失踪事件の捜査ファイルも含まれていた。
ミレーデは弟との船旅の途中で行方不明となり、その後も何も発見されないまま“船上から投身自殺”と結論づけられていた。だが、その捜査結果にあらためて違和感を持ったカールは、助手のアサドと共に調査を開始する。そして、次々と明らかになる新事実により「彼女は自殺などしていない。事件に巻き込まれたのだ」という確信が導きだされていく。果たして、彼女は殺されたのか?それとも――?[プレスより]
北欧ミステリーを代表するユッシ・エーズラ・オールスンの人気シリーズの第一弾『特捜部Q 檻の中の女』が、ニコライ・アーセル脚本、ミケル・ノルガード監督で映画化された。その見所は、原作と同じように大きくふたつに分けられる。
ひとつは、5年前に起きた未解決事件の真相だ。女性議員ミレーデは船上で何者かに拉致され、与圧室の中に監禁されていた。彼女には犯人の動機がわからないが、食事と排泄のためのバケツが用意され、一年ごとに気圧が上げられていく。この手の込んだ計画は、パク・チャヌクの『オールド・ボーイ』を連想させる。
もうひとつは、カールとアサドという主人公の魅力だ。カールは腕利きのベテラン刑事だが、皮肉屋で強引な行動をとるため、周囲から煙たがられている。しかも、部下を亡くし、パートナーが半身不随となり、自らも重傷を負った事件の後遺症で、情熱を失い、いつも機嫌が悪い。そんなカールは、警察署の地下に新設された部署“特捜部Q”の責任者に任命され、体よく厄介払いされる。
その部署に助手として現れるのがアサドだ。中東からの移民であるアサドは、未解決事件の資料をてきぱきと整理し、やる気を見せる。資料のなかでカールの目にとまったのが、ミレーデ失踪事件で、ふたりは彼女の足跡を辿り出す。アサドは鋭い洞察力の持ち主で、思わぬところから手がかりを拾い上げる。
この映画を観てまず驚かされるのは、かなりの長さがある原作を97分にまとめていることだ。しかも映画には、原作とは一味違うメリハリがつけられている。 |