オールド・ボーイ
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(2013) on IMDb


2013年/アメリカ/カラー/103分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

時代を斬ることも本能を剥き出しにすることもない
不完全燃焼のリメイク

 

[ストーリー] 1993年10月8日、広告代理店重役ジョー・ドーセットの人生は、はてしない悪夢にのみ込まれた。公私共に行き詰まって真夜中の中華街をさまよっていた彼は、泥酔して意識が混濁するなか、安ホテルのような一室に監禁されてしまったのだ。何者かの監視下に置かれ、ひたすら単調に流れる時間に精神を蝕まれる絶望の日々。ありえないほど理不尽な監禁生活がついに20年目に突入したある日、ジョーは突然外界に解放された。

 監禁中に妻殺しの汚名を着せられたジョーは、休む間も惜しんで猛然と動き出す。愛娘ミナとの再会を果たす前に、何としても自分を陥れた犯人を捜し出し、復讐を成し遂げねばならないのだ。若く美しい女性マリーの協力を得たジョーは凄まじい執念で真相に迫るが、やがて彼の前に姿を現した犯人は、復讐のためにあらゆる人間の良心を捨てた冷酷非情な男だった――。[プレスより]

 パク・チャヌクの傑作『オールド・ボーイ』(03)をスパイク・リーがリメイク。主演は、ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、シャールト・コプリー。レビューのテキストは準備中です。とりあえず簡単に感想を。

■この題材で重要になるのは、主人公が監禁される時間です。『オールド・ボーイ』(03)のレビューで詳しく書いたように、パク・チャヌク監督は、主人公が監禁される15年と韓国社会が急激な変貌を遂げる15年間を巧みに重ね合わせています。そして、そんな変化する時代の勢いに流されるはずだった主人公は、別な人間になります。

 筆者は、スパイク・リーが、独自の視点でどのように時代を区切り、アメリカ社会のどのような変化を浮き彫りにするのか楽しみにしていました。しかし、93年からの20年間には、9・11やイラク戦争、ハリケーン・カトリーナ、オバマ大統領就任などの出来事が普通に並んでいるだけでした。だから主人公と時代や社会が特別な結びつきを持つことはありません。

■プレスにはスパイク・リーの以下のようなコメントがあります。「監禁されると、ジョーは動物的な本能を取り戻していく。本能は誰もが持っているものだが、ほとんどの文明において僕たちは本能を抑制しなさい、少なくとも密室以外ではさらけ出してはいけないと教えられる。それでも僕たちの内面には本能剥き出しの動物が潜んでいるんだ」


◆スタッフ◆
 
監督   スパイク・リー
Spike Lee
脚本/共同製作 マーク・プロトセヴィッチ
Mark Protosevich
撮影 ショーン・ボビット
Sean Bobbitt
編集 バリー・アレクサンダー・ブラウン
Barry Alexander Brown
音楽 ロケ・バニョス
Roque Banos
 
◆キャスト◆
 
ジョー・ドーセット   ジョシュ・ブローリン
Josh Brolin
マリー・セバスチャン エリザベス・オルセン
Elizabeth Olsen
エイドリアン/謎の男 シャールト・コプリー
Sharlto Copley
チェイニー サミュエル・L・ジャクソン
Samuel L. Jackson
チャッキー マイケル・インペリオリ
Michael Imperioli
エドウィナ・バーク リンダ・エモンド
Linda Emond
トム・メルビー医師 ジェームズ・ランソン
James Ransone
“黄色い傘の女” ポム・クレメンティフ
Pom Klementieff
-
(配給:ブロードメディア・スタジオ)
 

 監禁によって主人公が本能剥き出しの存在になるというアイデアは面白いと思います。しかし実際のドラマでは別の要素が、そのアイデアを邪魔しています。閉ざされた空間のなかで、ジョーは愛娘に宛てて、届くはずのない手紙を綴ろうとし、ジョーを罠にはめた人物も彼が娘のことを意識するように仕向けます。このふたつの要素はそう簡単に両立するものではないので、本能をめぐる表現も歯切れが悪くなります。

■この映画では、ジョーと娘の繋がりについて、オリジナルにはないトリックが盛り込まれていますが、そういう部分に凝るよりも、時代をどう斬るかに才気を注ぎ込んでほしかったと思います。スパイク・リーは果たしてこの企画に乗り気だったのか? 疑問が残ります。


(upload:2014/07/25)
 
 
《関連リンク》
パク・チャヌク 『オールド・ボーイ』 レビュー ■
ポン・ジュノ 『殺人の追憶』 レビュー ■
スパイク・リー 『インサイド・マン』 レビュー ■
スパイク・リー 『ドゥ・ザ・ライト・シング』 レビュー ■

 
 
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