シェフ 三ツ星フードトラック始めました
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(2014) on IMDb


2014年/アメリカ/カラー/115分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

マイアミ→ニューオーリンズ→オースティン→LA
料理と風景と音楽が一体になったロード・ムーヴィー

 

[ストーリー] ロサンゼルスにある一流レストランの<総料理長>カール・キャスパーは、メニューにあれこれと口出しするオーナーと対立し、突然店を辞めてしまう。次の仕事を探さなければならない時にマイアミに行った彼は、絶品のキューバサンドイッチと出逢う。その美味しさで人々に喜んでもらう為に、移動販売を始めることに。譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、マイアミ〜ニューオーリンズ〜オースティン〜ロサンゼルスまで究極のキューバサンドイッチを作り、売る旅がスタートした――。[プレスより]

 『アイアンマン』シリーズの製作総指揮、監督、出演で知られるジョン・ファヴローが、インディーズのスタンスに回帰して作り上げた『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は、料理と風景と音楽が一体になったロード・ムーヴィーだ。正確には旅が始まるのは後半からだが、そこが大きな見所になるので、ロード・ムーヴィーということにしておく。

 そして、そんな後半の旅を盛り上げるのがまずなによりも音楽だ。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました:オリジナル・サウンドトラック』のレビューで書いたように、マイアミ、ニューオーリンズ、オースティンという土地と結びついたサルサ、ブラス・バンド、ブルースなど、様々なスタイルの音楽がセレクトされている。マイアミのペリーコ・エルナンデスやオースティンのゲイリー・クラーク・ジュニアなど、実際に演奏が見られる場面もある。

 さらに、マイアミのキューバサンドイッチ、ニューオーリンズ名物のベニエ、オースティンのテキサス風BBQなど、土地と結びついた料理も食欲をそそる。

 ただし、ストーリーには、音楽や料理が醸し出す雰囲気に頼って、詰めが甘くなっているところがある。カールがLAの一流レストランを辞める原因は、オーナーのリバとの対立だけではない。トラブルの発端は、人気のフード・ブロガー、ラムジー・ミシェルがレストランの定番メニューを痛烈に批判したことにある。

 そのラムジーの批判には根拠がある。彼は、マイアミ時代のカールの料理のファンだった。だから、店を辞めたカールが、前妻イネズの提案でマイアミを訪れる展開が興味深いものになる。当然私たちは、そこでカールの料理人としてのルーツが明らかにされ、原点に立ち返ったところから旅が始まると思う。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/製作   ジョン・ファヴロー
Jon Favreau
撮影 クレイマー・モーゲンソー
Kramer Morgenthau
編集 ロバート・レイトン
Robert Leighton
 
◆キャスト◆
 
カール・キャスパー   ジョン・ファヴロー
Jon Favreau
イネズ ソフィア・ベルガラ
Sofia Vergara
マーティン ジョン・レグイザモ
John Leguizamo
モリー スカーレット・ヨハンソン
Scarlett Johansson
ラムジー オリヴァー・プラット
Oliver Platt
トニー ボビー・カナヴェイル
Bobby Cannavale
リバ ダスティン・ホフマン
Dustin Hoffman
マービン ロバート・ダウニー・Jr.
Robert Downey Jr.
-
(配給:ソニー・ピクチャーズ
エンタテインメント)
 

 しかし、実際にはルーツは曖昧にされ、カールがキューバサンドイッチに美味さに驚くことでフードトラックの旅に移行してしまう。マイアミでカールがどのように料理に目覚め、どんな料理がラムジーを虜にしたのかはわからない。

 この映画に流れる音楽には、それぞれのルーツが感じられるが、カールにはルーツが見えない。土地に根ざした音楽や料理が素晴らしいだけに、どうしてもドラマが予定調和的に見えてしまう。


(upload:2015/03/23)
 
 
《関連リンク》
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました:OST』 レビュー ■
ボブ・ジラルディ 『ディナーラッシュ』 レビュー ■
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