[ストーリー] ロサンゼルスにある一流レストランの<総料理長>カール・キャスパーは、メニューにあれこれと口出しするオーナーと対立し、突然店を辞めてしまう。次の仕事を探さなければならない時にマイアミに行った彼は、絶品のキューバサンドイッチと出逢う。その美味しさで人々に喜んでもらう為に、移動販売を始めることに。譲り受けたボロボロのフードトラックを改装し、マイアミ〜ニューオーリンズ〜オースティン〜ロサンゼルスまで究極のキューバサンドイッチを作り、売る旅がスタートした――。[プレスより]
『アイアンマン』シリーズの製作総指揮、監督、出演で知られるジョン・ファヴローが、インディーズのスタンスに回帰して作り上げた『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は、料理と風景と音楽が一体になったロード・ムーヴィーだ。正確には旅が始まるのは後半からだが、そこが大きな見所になるので、ロード・ムーヴィーということにしておく。
そして、そんな後半の旅を盛り上げるのがまずなによりも音楽だ。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました:オリジナル・サウンドトラック』のレビューで書いたように、マイアミ、ニューオーリンズ、オースティンという土地と結びついたサルサ、ブラス・バンド、ブルースなど、様々なスタイルの音楽がセレクトされている。マイアミのペリーコ・エルナンデスやオースティンのゲイリー・クラーク・ジュニアなど、実際に演奏が見られる場面もある。
さらに、マイアミのキューバサンドイッチ、ニューオーリンズ名物のベニエ、オースティンのテキサス風BBQなど、土地と結びついた料理も食欲をそそる。
ただし、ストーリーには、音楽や料理が醸し出す雰囲気に頼って、詰めが甘くなっているところがある。カールがLAの一流レストランを辞める原因は、オーナーのリバとの対立だけではない。トラブルの発端は、人気のフード・ブロガー、ラムジー・ミシェルがレストランの定番メニューを痛烈に批判したことにある。
そのラムジーの批判には根拠がある。彼は、マイアミ時代のカールの料理のファンだった。だから、店を辞めたカールが、前妻イネズの提案でマイアミを訪れる展開が興味深いものになる。当然私たちは、そこでカールの料理人としてのルーツが明らかにされ、原点に立ち返ったところから旅が始まると思う。 |