[ストーリー] みずみずしい光と緑あふれるイタリア・トスカーナ地方の人里離れた土地で、昔ながらの方法で養蜂を営む一家。ジェルソミーナは4人姉妹の長女で、自然との共存をめざす父ヴォルフガングの独自の教育と、寵愛を受けてきた。家族は蜜蜂とともに自然のリズムのなかで生活を営んできたが、ある夏、村にデレビクルーが訪れ、一家がひとりの少年を預かったことから、日々にさざなみが立ち始める――。
『天空のからだ』(11)で長編デビューを果たしたイタリアの新鋭女性監督アリーチェ・ロルヴァケルの第2作です。カンヌ国際映画祭グランプリを受賞しています。彼女の姉で女優のアルバ・ロルヴァケルも出演しています。
[以下、簡単な感想です。その後レビューになります]
ロルヴァケルのデビュー作『天空のからだ』で筆者が唸ったのは、映画の舞台となる南イタリア、レッジョ・カラブリアという土地と登場人物たちの関係を炙り出す鋭い感覚でした。それゆえ自伝的な作品なのかと思い込みそうになりますが、そうではありません。レビューに書いたように、ロルヴァケルは中部のトスカーナ州フィエーゾレで生まれ、同じく中部のウンベルト州カステル・ジョルジョで育ち、カトリックの教育も受けていないからです。
これに対して『夏をゆく人々』は、彼女の故郷であるイタリア中部を舞台にしています。しかも彼女もヒロインのジェルソミーナと同じくドイツとイタリアの混血で、家は養蜂を営んでいました。この映画でも、土地と主人公たちの関係を炙り出す感性に唸りますが、デビュー作で証明されているように、そんな感性と自伝的な要素を単純に結びつけることはできません。
そこで筆者が注目したいのが、2作品がよく似た場面から始まることです。それは屋外で、闇のなかに光が瞬き、人々が動き回っているような場面です。警察か捜索隊が犠牲者や遭難者を捜しているのではないかと思いたくなる光景ですが、どちらもそうではないことがわかります。そんな導入部は、ロルヴァケルが舞台となる土地を普通とは違う感覚でとらえることを示唆する、異世界への入口になっているといえます。詳しくはあらためて。 |