[Introduction] 『天空のからだ』(11)で長編デビュー、『夏をゆく人々』(14)でカンヌ国際映画祭グランプリを受賞したイタリアの女性監督アリーチェ・ロルヴァケルが実話にインスパイアされて作り上げた長編第3作。その実話とは、イタリアで80年代初頭に小作制度が廃止された後に、領主が農民たちにその事実を知らせず、彼らを隔離して搾取しつづけていた詐欺事件。ロルヴァケルは、そんな実話からリアリズムではなく寓話的な世界を切り拓いていく。
[Story] 前半では、山間部の架空の村で、公爵夫人に騙された青年ラザロや農民たちが、外部から隔てられた生活を強いられている。ところが、この公爵夫人に反抗する息子が起こした狂言誘拐をきっかけに、夫人の悪事が露見し、村人たちは初めて外の世界に出て行くことになる。
その前半の終盤で、ラザロは足を滑らせ、崖から谷底に転落してしまう。やがて彼は、獲物を物色する野生の狼の気配で目覚めるが、村は廃墟になっている。そこで、村人を追うように街に出て、再会を果たすが、ラザロだけが昔のままで、村人たちはみな年を取っている。
ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● イタリアで実際に起きた事件を元に描かれた寓話的世界|『幸福なラザロ』
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