『ムーンライト』を監督したバリー・ジェンキンスは、この映画でアカデミー賞の監督賞にノミネートされた。映画の原案になったのは、黒人でゲイでもあるタレル・アルバン・マクレイニーの自伝的な戯曲「In Moonlight Black Boys Look Blue」。ジェンキンス自身はゲイではないが、彼のデビュー作である『Medicine for Melancholy』(08)のことを知れば、その独自の視点や世界観が2作目の『ムーンライト』に引き継がれ、原案の戯曲と融合していることがわかるだろう。
『Medicine for Melancholy』の舞台は、ジェンキンスが一時期、暮らしていたサンフランシスコだ。物語は、主人公である黒人の男女が、友人宅で目覚めるところから始まる。その様子から、彼らがそれぞれにパーティに参加し、酒の勢いも手伝って一夜をともにしたことがわかる。この映画では、そんなふうにして出会った男女が過ごす24時間のドラマが描き出される。