[ストーリー] ハリウッドに豪邸を構えるワイス家の人々は、誰もが羨む成功を手にした華麗なるセレブ・ファミリー。独自の自己啓発メソッドを開発した家長のスタッフォードは多くの著名人を顧客として抱え、アイドル子役としてブレイクした息子のベンジーは、母親クリスティーナのマネージメントのもと、13歳にして巨額のギャラを荒稼ぎしている。
そんな表向きは順風満帆の一家の日常が、長らく絶縁状態だったトラブルメーカーの娘アガサと再会したことによって崩れ出す。一方、アガサを個人秘書として雇った落ち目の大物女優ハバナは、今は亡きスター女優である母親の亡霊につきまとわれ、極度のノイローゼに陥っていた。やがてセレブである続けることのプレッシャーに押しつぶされ、封印されていた禁断の秘密やトラウマが露になった彼女らは、為す術もなく破滅への道を転がり落ちていくのだった――。[プレスより]
『コズモポリス』(12)につづくデヴィッド・クローネンバーグの新作です。レビューのテキストは準備中です。とりあえず簡単に感想を。
この作品でまず注目したいのは、脚本を手がけているブルース・ワグナーです。プレスには、「脚本家ブルース・ワグナーが伝説的なハリウッド映画『サンセット大通り』にインスパイアされ、かつてこの街のリムジン運転手として働いていた頃の実体験を織り交ぜて創造した、グロテスクなまでに異形の家族ドラマ」と説明されているだけで、スタッフのプロフィールにも取り上げられていませんが、アメリカではハリウッドを題材にした小説も数冊出していて、人気のある作家でもあります。また、ジェイムズ・エルロイとも接点があります。
筆者は90年代にワグナーの小説『I’m Losing You』を読んだことがありますが、ハリウッドという世界のなかでとり憑かれた人々が交錯するグロテスクな風刺小説になっていました。 |