マップ・トゥ・ザ・スターズ
Maps to the Stars


2014年/カナダ=アメリカ=ドイツ=フランス/カラー/112分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

ブルース・ワグナーのグロテスクな風刺と
クローネンバーグの喪失へのオブセッション

 

[ストーリー] ハリウッドに豪邸を構えるワイス家の人々は、誰もが羨む成功を手にした華麗なるセレブ・ファミリー。独自の自己啓発メソッドを開発した家長のスタッフォードは多くの著名人を顧客として抱え、アイドル子役としてブレイクした息子のベンジーは、母親クリスティーナのマネージメントのもと、13歳にして巨額のギャラを荒稼ぎしている。

 そんな表向きは順風満帆の一家の日常が、長らく絶縁状態だったトラブルメーカーの娘アガサと再会したことによって崩れ出す。一方、アガサを個人秘書として雇った落ち目の大物女優ハバナは、今は亡きスター女優である母親の亡霊につきまとわれ、極度のノイローゼに陥っていた。やがてセレブである続けることのプレッシャーに押しつぶされ、封印されていた禁断の秘密やトラウマが露になった彼女らは、為す術もなく破滅への道を転がり落ちていくのだった――。[プレスより]

 『コズモポリス』(12)につづくデヴィッド・クローネンバーグの新作です。レビューのテキストは準備中です。とりあえず簡単に感想を。

 この作品でまず注目したいのは、脚本を手がけているブルース・ワグナーです。プレスには、「脚本家ブルース・ワグナーが伝説的なハリウッド映画『サンセット大通り』にインスパイアされ、かつてこの街のリムジン運転手として働いていた頃の実体験を織り交ぜて創造した、グロテスクなまでに異形の家族ドラマ」と説明されているだけで、スタッフのプロフィールにも取り上げられていませんが、アメリカではハリウッドを題材にした小説も数冊出していて、人気のある作家でもあります。また、ジェイムズ・エルロイとも接点があります。

 筆者は90年代にワグナーの小説『I’m Losing You』を読んだことがありますが、ハリウッドという世界のなかでとり憑かれた人々が交錯するグロテスクな風刺小説になっていました。


◆スタッフ◆
 
監督   デヴィッド・クローネンバーグ
David Cronenberg
脚本 ブルース・ワグナー
Bruce Wagner
撮影 ピーター・サシツキー
Peter Suschizky
編集 ロナルド・サンダース
Ronald Sanders
音楽 ハワード・ショア
Howard Shore
 
◆キャスト◆
 
ハバナ・セグランド   ジュリアン・ムーア
Julianne Moore
アガサ・ワイス ミア・ワシコウスカ
Mia Wasikowska
スタッフォード・ワイス ジョン・キューザック
John Cusack
ジェローム・フォンタナ ロバート・パティンソン
Robert Pattinson
ベンジー・ワイス エヴァン・バード
Evan Bird
クリスティーナ・ワイス オリヴィア・ウィリアムズ
Olivia Williams
クラリス・タガート サラ・ガドン
Sarah Gadon
-
(配給:プレシディオ)
 

 たとえば、ロシアの作家ゴーゴリの「死せる魂」をロスを舞台にリメイクし、アレック・ボールドウィンにエイズにかかった人々に生命保険の勧誘をする疲れ切ったセールスマンをやらせようと必死になっているプロデューサー、息子の同級生の母親を車ではねてしまい、自分を癒すために資金を調達して女のゾンビが道路を彷徨うチープなホラーのシリーズを作って70年代に一世を風靡し、新しい企画で再起を狙うプロデューサー、精神科医になるつもりが、マリブの救急病院に魚アレルギーで呼吸困難におちいったバーバラ・ストライザンドが担ぎ込まれてきたときに、インターンなら誰でもやる処置をしただけで神様扱いされたことが一大転機となり皮膚科医となったセレブフリーク、2年前に別れた脚本家の妻との関係が、死体の爪がのびるようにいまだに続いていると信じながらセラピーを受ける一方で、子持ちのホームレスの女を囲っているエージェントなどが登場します。

 この『マップ・トゥ・ザ・スターズ』も、そういう曲者作家が脚本を手がけていることを頭に入れて観ると、より楽しむことができると思います。

 

(upload:2014/11/16)
 
 
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