[ストーリー] 郊外の町ニュー・オランダで暮らすヴィクターは、科学に夢中の10歳の少年。陽気な愛犬スパーキーは、かけがえのない相棒だ。だがある日、不幸な事後がスパーキーの命を奪ってしまう。その死を受け入れられないヴィクターは、なんと“禁断の実験”によってスパーキーを甦らせてしまった。それは、決して誰にも知られてはいけない秘密。ところが、その秘密をクラスメイトたちに知られてしまい――とんでもない大事件が![プレスより]
ティム・バートンのストップモーション・アニメーション作品『フランケンウィニー』には、ふたつの起源があるといえる。
ひとつは、カリフォルニア州バーバンクのサバービアで育ったバートンの少年時代の記憶だ。「彼は、5歳から9歳の頃に犬を飼い、特別な絆で結ばれ、そして初めて永遠の別れを経験した」(プレスより)。
もうひとつは、バートンがディズニーのアニメーター時代に監督した実写による短編『フランケンウィニー』(84)だ。バートンはサバービアでホラー映画を観ながら成長した。なかでも特に、『アッシャー家の惨劇』(60)に始まるエドガー・アラン・ポー作品の映画化シリーズの主演で不動の地位を築いた俳優ヴィンセント・プライスやジェームズ・ホエール監督の『フランケンシュタイン』(31)に傾倒していた。この短編では、愛犬の記憶と『フランケンシュタイン』の物語が融合し、主人公の少年が死んだ愛犬を雷の力で生き返らせ、隣人たちを騒動に巻き込んでいく。
長編として甦った『フランケンウィニー』を観て、筆者がまず思い出すのは、郊外生活に関するバートンの以下のような発言だ。
「郊外で育つってことは、歴史に対する感覚や、文化に対する感覚、何かへの情熱に対する感覚のない場所で育つってことなんだ。人々が音楽を好きだなんて思えなかった。感情が表に出てなかったんだ。ほんとに奇妙だったよ。『なんであんなものがあるんだ? 僕はどこにいるんだ?』って感じ。ものごとに対する愛着があるなんて思えなかった。だから順応して自分の個性の大部分を殺すか、自分はみんなと関係を断っていると感じさせてくれるだけの、すごく強力な精神生活を発達させるかの、どちらかを強いられるんだ」(『ティム・バートン 映画作家が自身を語る』)
この発言でのなかでもここで特に注目したいのは、もちろん「愛着」だ。バートンの犬への愛着が表れているのは、先述した短編だけではない。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』には、幽霊になった犬ゼロが、『ティム・バートンのコープスブライド』には、骸骨になった犬スクラップスが登場する。 |