ホーム・アローン ルーマニアの悲劇(原題)
Home Alone ‐ A Romanian Tragedy


2010年/ルーマニア/カラー/52分/TVドキュメンタリー
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(初出:)

 

 

親が海外に出稼ぎに出ている間に、自ら命を絶つ子供たち
悲劇を体験した3つの家族の物語を追ったTVドキュメンタリー

 

 ステレ・グレア監督の『ウィークエンド・ウィズ・マイ・マザー(英題)/Weekend cu mama』(09)のヒロイン、ルイザは、15年前に人生をリセットして仕事を得るために、3歳の娘クリスティーナを姉夫婦に預けて、ルーマニアからスペインに渡った。安定した生活を手にし、ルーマニアに戻ってきた彼女は、クリスティーナが家出し、麻薬中毒になっていることを知る。自分の責任を痛感したルイザは、なんとかクリスティーナに救いの手を差し伸べようとするが、娘はさらに深刻な問題に巻き込まれていく。

 フローリン・サーバン監督の『俺の笛を聞け』(10)の主人公は、あと2週間辛抱すれば少年院を出られる18歳の少年シルヴィウ。ところが、面会にやって来た弟から、長い間自分たちを置き去りにしてイタリアで働いていた母親が突然現れ、彼が親代わりになって育ててきた弟をイタリアに連れて行こうとしていることを知らされる。居ても建っても居られなくなったシルヴィウは、そんな母親の計画を是が非でも阻止するためにある大胆な行動に出る。


◆スタッフ◆
 
監督   Ionut Carpatorea
 
◆キャスト◆
 
     
-
(配給:)
 

  この2本の映画の背景を知るために、たいへん参考になるのが、このTVドキュメンタリー『ホーム・アローン ルーマニアの悲劇(原題)』(10)だ。ルーマニア国内に仕事がないため、親がスペインやイタリア、その他の西欧諸国に働きに出る。その結果、両親の一方か両方が不在の子供たちが35万人以上いるという。

 はじまりは2000年前後に、大量のルーマニア人がスペインで仕事についたことだった。仕事の大半は農場でのイチゴ摘み作業だったため、彼らは“ストロベリー・ピープル”と呼ばれるようになり、出稼ぎが他の国にも広がるにしたがって出稼ぎ労働者全般を意味する言葉になった。彼らは貴重な外貨の獲得源となり、ルーマニア経済を支えている。

 しかし、残された子供たちは、孤独に苛まれ、非行や犯罪だけでなく、うつ状態から自殺に走ることも少なくない。彼らは、“ストロベリー・オーファンズ”とも呼ばれる。このTVドキュメンタリーでは、子供が自ら命を絶つという悲劇を体験した3つの家族に迫り、親と子供たちの複雑な思いを掘り下げている。

 

(upload:2014/07/19)
 
 
《関連リンク》
ステレ・グレア 『ウィークエンド・ウィズ・マイ・マザー(英題)』 レビュー ■
フローリン・サーバン 『俺の笛を聞け』 レビュー ■
カリン・ペーター・ネッツアー 『私の、息子』 レビュー ■
クリスティアン・ムンジウ 『汚れなき祈り』 レビュー ■
クリスティアン・ムンジウ 『4ヶ月、3週と2日』 レビュー ■
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