ベルリンを舞台にした映画『レボリューション6』のなかで、登場人物の刑事がこんな台詞を口にする、「右と左の闘いは終わった。いまは勝ち組と頑固な負け組の闘いだ」。この言葉は、壁を崩壊に導いたのが、人々の自由への憧れではなく、グローバリゼーションの経済的な力だったことを物語る。
『レボリューション6』では、そんな現実に対して、かつて理想を共有し、不法占拠をした仲間たちが再び結束し、「勝ち組と負け組」の図式を修正していく。さらに、『グッバイ、レーニン!』では、母親のために「負け組」の道を選ぶ主人公の情熱が、周囲を動かし、もうひとつのドイツ統一という歴史を作り上げる。
『レボリューション6』の主人公たちと同じように、かつてベルリンで不法占拠をした経験を持つハンス・ワインガルトナーが監督したこの『ベルリン、僕らの革命』では、現代を生きる若者たちが、そんな現実と向き合い、思わぬところに出口を見出していく。主人公は、長年の親友であるヤンとピーター、そしてピーターの恋人のユール。ユールはヤンを敬遠し、ヤンも彼女に無関心だが、それはお互いの表面だけを見ているからだ。
ヤンとピーターにはふたりだけの秘密がある。世界を変革する情熱に駆られるヤンと彼に同調するピーターは、豪邸に押し入り、何も盗まず、家具などを積み上げ、"エデュケーターズ(教育者)"の署名を残していく。それは「勝ち組」に対する警告だといえる。
常に現実に対する苛立ちを抱えているヤンは、ひょんなことからユールが、交通事故が原因で会社重役に多額の賠償金を払っていることを知り、秘密を打ち明ける。そして、ふたりは、その重役の豪邸に侵入し、解放感を味わうが、彼女のミスから重役に顔を見られ、ついにはピーターも巻き込んで、重役を誘拐してしまう。
ところが、その誘拐劇は、かつて左翼の闘士だった重役が、彼らに共感して打ち解けていくかと思えば、若者たちの間では三角関係から亀裂が生じるなど、意外な方向へと展開し、ラストのどんでん返しに繋がる。 |