メーキング・ラヴ・トゥ・ザ・ダーク・エイジズ / バーント・シュガー・ジ・アーケストラ・チャンバー Making Love to the Dark Ages / Burnt Sugar The Arkestra Chamber (2009)
(初出:Into the Wild 1.0 | 大場正明ブログ 2009年4月2日更新)
ブッシュの8年間という暗黒時代を総括し、未来へ
『Making Love to the Dark Ages』は、プロデューサー/ギタニストで、優れた音楽評論家でもあるグレッグ・テイト率いるバーント・シュガー・ジ・アーケストラ・チャンバー(Burnt SugarThe Arkestra Chamber)のニューアルバムだ。
1999年に結成されたバーント・シュガーは、ジャズ、ロック、ファンク、ソウルといったジャンルの境界を超えて、ニューヨークのミュージシャンたちを結びつけ、ハイブリッドな サウンドを生み出してきた。『Making Love to the Dark Ages』はこれまでの作品のなかでも、スケールが大きく、最もまとまりがある。
このアルバムには、3つのパートからなる<Chains and Water>と2つのパートからなる<Making Love to the Dark Ages>という大作が含まれている。しかし、だからまとまりがあるというのは、あまりに単純すぎるだろう。バーント・シュガーのサウンドの基本はあくまで集団即興であり、大作だからといってあらかじめ方向性が明確に決まっているわけではない。
このアルバムは、時代の大きな変化と関わりを持っている。<Making Love to the Dark Ages>のなかの"暗黒時代"という表現は、ブッシュ政権の8年間を意味している。一方、<Chains and Water>は、アフリカからアメリカへの奴隷貿易が曲の出発点になっている。
Burnt Sugar the Arkestra Chamber : Greg Tate - guitar, laptop, conduction; Lisala Beatty - vocals; Jeremiah - vocals; Lewis 'Flip' Barnes - trumpet; Satch Hoyt - flute, percussion; Matana Roberts - alto sax; Petre Radu Scafaru - tenor sax; Mikel Banks - harmonica; Rene Akan - guitar; Vijay Iyer - piano; Bruce Mack - synthesizer; Jason DiMatteo - acoustic bass; Shahzad Ismaily - efx bass; Jared Michael Nickerson - electric bass; Chris Eddleton - drums; Will Martina - cello; Michael Veal - soprano sax, slap electric bass; Micah Gaugh - alto sax; Avram Fefer - alto sax, bass clarinet; 'Moist' Paula Henderson - baritone sax; David Smith - trombone; Mikel Banks - freak-a-phone; Ben Tyree - guitar; Trevor Holder - drums; Abby Dobson - vocals; Karma Johnson - vocals; Latasha Natasha Nevada Diggs - elec. vocals; Vernon Reid - guitar; Swiss Chris - drums; W-Myles Reilly - piano; Justice Dilla X - vocals, piano; Derrin Maxwell - vocals; Mazz Swift - violin; Andrew Lassalle - guitar; Meret Koehler - drums
(LiveWired Music )
『Making Love to the Dark Ages』が、スケールとまとまりを生み出しているのは、そうした時代の大きな変化によるところが大きい。この変化によってこれまで以上に深く結び付けら れたバーント・シュガーは、ブッシュの8年間という暗黒時代を総括し、オバマの時代に向けて、もう一度、奴隷貿易という出発点から黒人文化を見つめなおし ている。