ブレイク・スタッフ / ヴィジェイ・アイヤー・トリオ
Break Stuff / Vijay Iyer Trio (2015)


 
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(初出:)

 

 

越境するアイヤーの多岐にわたる活動が
ピアノ・トリオに集約された濃密な世界

 

 ニューヨークを拠点に活動するインド系ジャズ・ピアニスト、ヴィジェイ・アイヤー『ヒストリシティ/Historicity』『アッチェレランド/Accelerando』につづくピアノ・トリオの第三弾です。ECMレーベルからの初リリースとなった前作『ミューテーションズ/Mutations』が、ピアノ、エレクトロニクスと弦楽四重奏のユニットによる作品だったので、ECMからは初のトリオ作品ということになります。メンバーは、ベースのステファン・クランプ、ドラムスのマーカス・ギルモア、すでに10年以上活動をつづけている鉄壁のトリオといえます。

 アイヤーのオリジナルのほかに、セロニアス・モンクの<Work>、ビリー・ストレイホーンの<Blood Count>、ジョン・コルトレーンの<Countdown>などが取り上げられています。

 アイヤーは以前から、エレクトリック・ミュージックやヒップホップにも関心を持ち、積極的にアプローチしてきました。<Hood>は、デトロイトのエレクトリック・ミュージックのプロデューサー/DJ、ロバート・フッドにインスパイアされた曲です。アイヤーはトリオの前作『アッチェレランド/Accelerando』でフライング・ロータスの<Mmmhmm>を取り上げていましたが、それに通じる関心とアプローチを見ることができます。

 1曲目の<Starlings>=ムクドリ、10曲目の<Geese>=ガン[ガチョウ]、12曲目の<Wrens>=ミソサザイで、鳥の名前がタイトルになっているのは偶然ではありません。アイヤーはこれまで様々なマルチメディア・パフォーマンスを繰り広げてきましたが、この3曲も、ナイジェリア生まれでアメリカで活動する小説家テジュ・コール(Teju Cole)とのコラボレーション“オープン・シティ(Open City)”から生まれた作品が土台になっています。『オープン・シティ』はテジュ・コールの最初の小説で、ニューヨークを巡る旅の物語には、マンハッタンに生息する鳥の眼差しが盛り込まれています。その他者の眼差しは、人種やアイデンティティとも結びついています。

 <Mystery Woman>は、南インドのムリダンガム奏者Rajna Swaminathanとのコラボレーションが出発点になっている楽曲で、アイヤーのインド系というルーツと関わっているといえます。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Starlings
02. Chorale
03. Diptych
04. Hood
05. Work
06. Taking Flight
07. Blood Count
08. Break Stuff
09. Mystery Woman
10. Geese
11. Countdown
12. Wrens

◆Personnel◆

Vijay Iyer - piano; Stephan Crump - bass: Marcus Gilmore - drums

(ECM)
 


(upload:2015/03/29)
 
 
《関連リンク》
Vijay Iyer official site
Constructing an Identity, And Delving Deeper: Rajna Swaminathan
On Making Music With Vijay Iyer|Blu Notes|ARTINFO.com
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ルドレシュ・マハンサッパ 『Mother Tongue』レビュー ■

 
 
 
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