処女作になる青春小説が社会現象になるほどのベストセラーになり、今度はそれを自ら映画化したと書けば、小説家が監督にも挑戦したような印象を与えることだろう。だが、スティーブン・チョボスキーの出発点は小説ではない。
彼は20代で映画監督としてデビューした後で個人的な想いを詰め込んだ小説を発表し、機が熟すのを待つように長い時間をかけてそれを脚色し、映画化に漕ぎつけた。
「12歳の時に父親に自分は物書きになりたいと宣言したら、偉大な物書きは偉大な読者でもあるという言葉が返ってきた。ところが僕は全然読者をしない子供で、映画ばかり観ていたので、だったら脚本を書こうと思い、映画の道に進んだんだ。でも心のどこかにいつも小説を大切に思う気持ちがあるようで、不思議なことにこの映画を作る過程で小説への愛情を再び強く感じるようになった。今後の映像作家としての活動も、まず小説を書き、それを脚色し、自分で監督するようにしたいと思っているくらいだ」
『ウォールフラワー』の主人公は、小説家志望の孤独な若者チャーリー。高校入学と同時にスクールカーストの最下層に追いやられた彼は、自由奔放な上級生の兄妹パトリックとサムに出会うことで変貌を遂げていく。この映画では、登場人物それぞれが抱える心の痛みが誠実かつ繊細に描き出される。彼らがそんな痛みと向き合うドラマには、私たちにセラピー的な効果を及ぼすと思えるほどの深みがある。
「それは僕にとって最大の賛辞だ。原作で、そしてそれ以上に映画でやりたかったのは、苦悩しているのが自分だけではないと感じてもらうことだった。この映画が回復に向かうための青写真のようなものになってくれればと。映画を作るときには、できる限り人物の感情のあやとか複雑さを描き出したいと思っていた。そこに痛みの描写があり、みんなが一度奈落に沈むからこそ、上がっていくことができ、最後にカタルシスを感じられるんだ」 |