ジャンヌ・ダルク
Jeanne d'Arc / Joan of Arc  Joan of Arc
(1999) on IMDb


1999年/アメリカ=フランス/カラー/157分/シネスコ/ドルビーSR・SDDS・DTS
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(初出:「eiga.com」1999年11月29日更新号)

 

 

ジャンヌの啓示とベッソンの映画

 

 リュック・ベッソン作品のヒロインは、いつも独特の存在感を放っている。彼女たちは考えたりしない。ベッソンは、考えていたら手遅れのような緊迫した状況、あるいは自分の世界とあまりに異質であるために、考えることに意味がない環境に彼女たちを放りだす。だから彼女たちは、野性的な本能や根源的な力に頼るしかなくなる。

 突き詰めれば、ベッソンにとって時代背景や物語の流れはただの飾りにすぎない。彼に興味があるのは、極限の状況に適応し、進化するヒロインの存在だけであり、それだけで映画を成立させてしまうところに彼の魅力がある。

 そして、新作『ジャンヌ・ダルク』のヒロインもまた例外ではない。映画の冒頭で、ジャンヌが住む村がイギリス軍に襲われ、姉のカトリーヌが無惨に殺害され、慰み者にされるとき、戸棚のなかに潜むジャンヌは、怯えながら見つめていることしかできない。

 しかし、極限の状況が彼女を変えていく。ジャンヌは、戦いの方法すら知らずに戦場の真っ只中に放りだされ、内に秘められた力を呼び覚まし、致命傷を負いながらも再生する。それは、まさしくベッソン作品のヒロインといえる。

 しかも映画の後半では、それとは別の意味でベッソンの世界が見えてくる。

 ジャンヌは自分の神秘的な体験が、啓示なのか、自分が見たいものを見ただけなのか葛藤し、自分を信じる道を選ぶ。そんな彼女の姿にはベッソン自身がダブる。彼にとって映画を作るということは、物語が稚拙であろうが、荒唐無稽であろうが、レンズの効果で画面が歪もうが、自分が見たいものを啓示だと信じて視覚化することであるからだ。


◆スタッフ◆

監督/脚本   リュック・ベッソン
Luc Besson
脚本 アンドリュー・バーキン
Andrew Birkin
撮影 ティエリー・アルボガスト
Thierry Arbogast
編集 シルヴィ・ランドラ
Sylvie Landra
音楽 エリック・セラ
Eric Serra

◆キャスト◆

ジャンヌ   ミラ・ジョヴォヴィッチ
Milla Jovovich
シャルル7世 ジョン・マルコヴィッチ
John Malkovich
ヨランド・ダラゴン フェイ・ダナウェイ
Faye Dunaway
ジャンヌの良心 ダスティン・ホフマン
Dustin Hoffman
ジル・ド・レ ヴァンサン・カッセル
Vincent Cassel
デュノワ伯 チェッキー・カリョ
Tcheky Karyo

(配給:ソニー・ピクチャーズ)
 



(upload:2006/06/12)
 
 
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