リュック・ベッソンが『フィフス・エレメント』につづく新作の題材に選んだのは、フランスの歴史のなかで最も異彩を放つ女性ジャンヌ・ダルク。そして、その音楽を手がけているのはもちろんエリック・セラである。
「今回は歴史的な背景を意識してクラシック調の音楽にした。当時の音楽をそのまま使うということではなく、20世紀の感覚でクラシック調の音楽を作りたいと思ったんだ。ジャンヌが幻想を見る場面などでは、不気味な機械を思わせるような音も入れている」
ベッソン作品の魅力は、極端にいえば物語の流れなどおかまいなしに、ヒロインが追いつめられるような緊迫した状況からダイナミズムを引きだし、独自のドラマを語ってしまうところにある。それだけにそんな状況に絡む音楽が重要になる。『ジャンヌ・ダルク』では、たとえばジャンヌ率いるフランス軍とイギリス軍の3度にわたる戦闘場面に映像と音楽によるドラマが見えてくる。
「ベッソンは音楽が演じる役割をきっちり決めている。最初の戦闘では暴力的な戦いを音楽もそのまま表現し、音楽も戦いのなかにある。2度目の戦闘になると音楽が少し距離を置いてそれを眺める感じになる。戦闘そのものは同じに見えるが、音楽で変わる。音楽も役者と同じような役割があるんだ。そして3度目の戦闘では、戦いと音楽が完全に矛盾する関係になる。ジャンヌの信仰心と血生臭い戦いの矛盾がクローズアップされるんだ」
『ジャンヌ・ダルク』のサントラを完成させたセラには、『フィフス・エレメント』の後で発表した最初のソロ・アルバム『RXRA』につづく2枚目のソロの企画がひかえている。 |