エリック・セラ・インタビュー
Interview with Eric Serra


1999年
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(初出:「CDジャーナル」2000年1月号)

自己のレーベル、戦争という新たなテーマ

 リュック・ベッソンが『フィフス・エレメント』につづく新作の題材に選んだのは、フランスの歴史のなかで最も異彩を放つ女性ジャンヌ・ダルク。そして、その音楽を手がけているのはもちろんエリック・セラである。

「今回は歴史的な背景を意識してクラシック調の音楽にした。当時の音楽をそのまま使うということではなく、20世紀の感覚でクラシック調の音楽を作りたいと思ったんだ。ジャンヌが幻想を見る場面などでは、不気味な機械を思わせるような音も入れている」

 ベッソン作品の魅力は、極端にいえば物語の流れなどおかまいなしに、ヒロインが追いつめられるような緊迫した状況からダイナミズムを引きだし、独自のドラマを語ってしまうところにある。それだけにそんな状況に絡む音楽が重要になる。『ジャンヌ・ダルク』では、たとえばジャンヌ率いるフランス軍とイギリス軍の3度にわたる戦闘場面に映像と音楽によるドラマが見えてくる。

「ベッソンは音楽が演じる役割をきっちり決めている。最初の戦闘では暴力的な戦いを音楽もそのまま表現し、音楽も戦いのなかにある。2度目の戦闘になると音楽が少し距離を置いてそれを眺める感じになる。戦闘そのものは同じに見えるが、音楽で変わる。音楽も役者と同じような役割があるんだ。そして3度目の戦闘では、戦いと音楽が完全に矛盾する関係になる。ジャンヌの信仰心と血生臭い戦いの矛盾がクローズアップされるんだ」

『ジャンヌ・ダルク』のサントラを完成させたセラには、『フィフス・エレメント』の後で発表した最初のソロ・アルバム『RXRA』につづく2枚目のソロの企画がひかえている。


◆プロフィール◆

エリック・セラ
1959年、パリ生まれ。5歳でギターを弾き始め、15歳でジャズ・ロック・バンドを結成。17歳のときには売れっ子のスタジオ・ミュージシャンとして50以上のトップ・アーティストのレコーディングに参加した。1977年、18歳のときにリュック・ベッソンと知り合って短編「L'Avant Dernier」のスコアを担当。後にこの短編が『最後の戦い』(83)へと発展し、映画音楽のデビュー作になった。それ以来、ベッソンの映画には欠かせぬ存在。『サブウェイ』(85・アンダーグラウンドのベース奏者として出演もした),『グラン・ブルー』(88)、『ニキータ』(90)、『アトランティス』(91)、『レオン』(94)、『フィフス・エレメント』(97)と、彼のすべての作品を担当している。セザール賞では作曲賞を何度も受賞しており、フランス国内では常にベストセラー・アルバム。特に『グラン・ブルー』は、世界中で300万枚以上売れ、3ヶ月にわたってフランスのアルバム売り上げナンバー1を記録した。ベッソン作品以外では、ベッソンのプロデュースによるディディエグルッセ監督作品『神風』(86)、007シリーズの『ゴールデン・アイ』(95)などを手がけている。
(『ジャンヌ・ダルク』プレスより引用)


「来年の春先に製作に入る予定なんだ。1枚目とはまったく違ったものになると思う。前回は、それを作るまでずいぶん長い間、仲間たちと演奏してなかったので、一緒にやりたいという気持ちがどんどん膨らんでいって、ライブ感覚あふれる内容になった。ところが後で聴いてみると、自分のスタイルに合っていない作り方をしてしまったと思うんだ。今回は映画音楽と同じようにまずスタジオにこもって作曲に専念し、ミュージシャンを呼んでレコーディングし、ライブのときにはアレンジを変えてやろうと思っている」

 映画音楽の経験はソロの作業にも生かされているようだが、ベッソン以外の監督で、彼が魅力を感じたり、逆に一緒に仕事をしたくないと思うのは、どんな監督なのだろうか。

「とにかく音楽に重要な役割を与えてくれる監督はいいと思う。たとえばスコセッシやコッポラ、スピルバーグとか。一緒に仕事をしたくないのは、音楽に重要性を感じてない監督、それから映画そのものがつまらない監督。映画にはある程度、娯楽性が必要だと思う。これはフランス映画によくあることだけど、非常にインテリぶって、役者が悶々と哲学するような映画を作るような監督とはやりたくないし、やろうとしても絶対できない」


(upload:2007/12/24)
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