ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち
Rumble: The Indians Who Rocked The World


2017年/カナダ/英語/カラー&モノクロ/107分/5.1ch
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(初出:「ニューズウィーク日本版」映画の境界線2020年8月6日更新)

 

 

アメリカ音楽に深く影響を及ぼしていたインディアン文化
弾圧されながらも、人種混淆のなかで受け継がれた鼓動《リズム》

 

[Introduction] ロックの創造には数多くのアーティストや楽曲、さらには多様な音楽スタイルが関わっているが、アメリカ・インディアンのロック・ギタリストにしてシンガー・ソングライターのリンク・レイによる1958年発表のインスト曲「ランブル」ほど、ロックの誕生に大きな影響をおよぼした曲はないかもしれない。「ランブル」は、ディストーションとフィードバックを初めて用いた楽曲だった。そして、暴力行為を駆り立てるのではないかと恐れたラジオ局から、放送禁止処分を食らったごく少ないインストゥルメンタルのシングル盤の一つでもあった。映画『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』は、この「ランブル」のエピソードを皮切りに、インディアン文化を禁止し、検閲し、抹消しようとする試みにも関わらず、アメリカ先住民の音楽がいかにアメリカのポピュラーミュージックに不可欠なものであるかを探求する、かつて誰も触れなかった真実に迫るドキュメンタリーである。

 デルタ・ブルースの父チャーリー・パットン、1930年代から40年代のスウィング界でナンバーワンといわれたミルドレッド・ベイリー、カナダ生まれのフォーク・シンガー、パフィ・セイント・マリー、そしてロックに革命をもたらしたギターの鬼才、ジミ・ヘンドリックス。彼らに共通するのは、音楽史に独自の足跡を残した偉大なミュージシャンであるだけでなく、皆インディアンの血を引いているということ。しかしそのことについて言及されることはほとんどない。本作はそんな伝説的なアーティストにまつわるエピソードが、彼らをよく知るだけでなく、共に演奏し、霊感源としたアメリカ音楽業界の巨人たち――バディ・ガイ、クインシー・ジョーンズ、トニー・ベネットからイギー・ポップ、スティーヴン・タイラー、スティーヴィー・ヴァン・ザントにいたるまでのあらゆる人々――によって語られる。さらにはボブ・ディラン、ザ・フー、自らもインディアンをルーツに持つロビー・ロバートソン擁するザ・バンドなどのライブ映像やアーカイヴ、また現在も脈々と歌い継がれる先住民たちの演奏風景も交えながら、インディアンの音楽界への関りを多角的に解き明かしていく。そして不幸にも葬られた失われた文化の復権を高らかに謳い揚げるのだ。(プレス参照)

 ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

アメリカ音楽に深く影響を及ぼしていたインディアン文化『ランブル』


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/製作/製作総指揮   キャサリン・ベインブリッジ
Catherine Bainbridge
共同監督/脚本/撮影 アルフォンソ・マイオラナ
Alfonso Maiorana
 
◆キャスト◆
 
    リンク・レイ
Link Wray
  ロビー・ロバートソン
Robbie Robertson
  ジミ・ヘンドリックス
Jimi Hendrix
  リアノン・ギデンズ
Rhiannon Giddens
  ジェシ・エド・デイヴィス
Jesse Ed Davis
  ランディ・カスティーヨ
Randy Castillo
-
(配給:マーメイドフィルム、
コピアポア・フィルム)
 

 

 

(upload:2020/08/08)
 
 
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