アン・リー監督の『グリーン・デスティニー』の舞台は19世紀初頭の中国。剣の達人としてその名を天下にとどろかせたリー・ムーバイは、引退を決意し、女弟子ユー・シューリンに伝説の名剣“グリーン・デスティニー”を北京のティエ氏に届けるように頼む。そのユーは、ティエ氏の屋敷で隣人である貴族の娘イェンと出会う。彼女は剣士になる夢を抱いていたが、身分や家の事情で嫁がなければならない。だがその夜、伝説の名剣が何者かに奪われる。
ワイヤーアクションを駆使したこの作品は、ヒロインであるイェンの存在が際立つ女性映画になっているが、その一方で、アン・リーが男をどう描いているかということも見逃せない。アン・リー作品の男性像にはある種の共通点がある。彼らはそれぞれに壁に突き当たっていながら、その壁を直視することができず、孤立している。
アン・リーの長編デビュー作『推手』で、中国から息子夫婦が暮らすアメリカに引っ越してきた父親は、中国社会の混乱のなかで多くのものを犠牲にし、太極拳を支えにしている。だが、アメリカの生活のなかでは、ある意味でその太極拳が彼を孤立させることになる。
台湾が舞台の『恋人たちの食卓』に登場する父親は、大陸の中国料理の伝統を極めることで、自己のアイデンティティを確認している。そんな彼の料理は、ホテルの厨房であれば絶対的なものだが、娘たちと過ごす日曜日の晩餐では、腕を振るえば振るうほど娘たちを遠ざけてしまう。本来ならその料理は彼女たちと心を通わせるためにある。しかし父親は心を開いているつもりで、実は料理を極めることに逃避している。彼の味覚が失われていくのは、料理に大切なものが欠けているからなのだ。
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◆スタッフ◆ |
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監督・製作 |
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アン・リー
Ang Lee |
製作総指揮 |
ジェームズ・シェイマス、デヴィッド・リンド
James Schamus, David Linde |
原作 |
ワン・ドウルー
Wang Du Lu |
脚本 |
ワン・ホエリン、ジェームズ・シェイマス、ツァイ・クォジュン
Wang Hui-Ling, James Schamus, Tsai Kuo Jung |
撮影 |
ピーター・パウ
Peter Pau |
編集 |
ティム・スクワイアズ
Tim Squyres |
音楽 |
タン・ドゥン
Tan Dun |
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◆キャスト◆ |
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リー・ムーバイ |
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チョウ・ユンファ
Chow Yun-Fat |
ユー・シューリン |
ミシェル・ヨー
Michelle Yeoh |
イェン |
チャン・ツィイー
Zhang Ziyi |
ロー |
チャン・チェン
Chang Chen |
ジェイド・フォックス |
チェン・ペイペイ
Cheng Pei-pei |
ティエ氏 |
ラン・シャン
Lung Sihung |
ユィ長官 |
リー・ファーツォン
Li Fa Zeng |
ユー夫人 |
ハイ・イェン
Hai Yan |
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(配給:SPE) |
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