[ストーリー] 愛する夫と離婚し、傷心の日々を送るレイチェル。落ち込む彼女の唯一の慰めは、通勤列車の窓から見える“理想の夫婦”だった。幸せそうな二人は、かつてレイチェルが夫のトムと暮らしていた家の近くに住んでいた。トムは今その家で、妻のアナと生まれたばかりの娘と新しい人生を始めている。
ある朝、レイチェルはいつもの車窓から衝撃的な場面を目撃する。それは、“理想の妻”の不倫現場だった。翌日、レイチェルは夫婦の様子が気になり、確認するべく駅を降りる。しかし、彼らの家へ向かったところから記憶がなくなり、気が付けば自分の部屋で大けがをして倒れていた。まもなく“理想の妻”は、死体で発見される。
なぜか周囲から疑惑の目を向けられるレイチェル。どうやら、あの日の“空白の時間”に原因があるらしい。レイチェルが記憶を取り戻そうとすると、関わる人々の思いがけない秘密が明かされていく――。[プレス資料より]
ポーラ・ホーキンズの同名ベストセラー小説の映画化です。監督は『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』(11)や『ジェームズ・ブラウン 最高の魂を持つ男』(14)のテイト・テイラー。筆者はこれまでの作品のレビューで、テイラーとアメリカ南部の結びつきを強調してきましたが、今回はその部分は封印されています。
ただし、新作の世界がこれまでの作品とまったく無関係というわけではありません。筆者は『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』のレビューのなかで、「スキーターは家事をきっかけに、日常のなかで問題に目覚める。そして、人種の壁を超えた女性同士のホモソーシャルな連帯関係が生み出されていく」と書きましたが、新作でも女性同士のホモソーシャルな連帯関係が鍵を握っています。作品のテイストはまったく違いますが、ニック・カサヴェテス監督の『ジ・アザー・ウーマン』(14)に通じる要素があります。
そして、個人的にはテイラー以上に作品のカラーを生み出すのに貢献していると思えるのが、脚色を手がけたエリン・クレシダ・ウィルソンです。彼女はこれまでにスティーヴン・シャインバーグ監督と組んだ『セクレタリー』(02)や『毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』(06)の脚本を手がけていますが、この新作にもそれらに通じる視点を感じます。ということで、冒頭に提示したタイトルで、ウィルソンに注目したレビューを書く予定です。 |