ボヴァリー夫人とパン屋
Gemma Bovery  Gemma Bovery
(2014) on IMDb


2014年/フランス/カラー/99分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
line
(初出:)

 

 

果たして現実は芸術を模倣するのか――
現実のドラマには皮肉な結末が待ち受けている

 

[ストーリー] フランス西部ノルマンディー地方、美しい田園風景が広がる小さな村。パリで12年間出版社に勤務した後、平穏で静かな生活を求めて故郷に戻り、稼業のパン屋を継いだマルタン。毎日の単調な生活の中で文学だけが想像の友、とりわけボロボロになるまで読みふけっているのは、ここノルマンディーを舞台にしたフローベールの『ボヴァリー夫人』だった。

 そんなある日、向かいにイギリス人夫妻、その名もジェマとチャーリー・ボヴァリーが越してくる!マルタンはこの思わぬ偶然に驚き、小説さながらに行動する奔放なジェマから目が離せなくなってしまう。一方ジェマもマルタンの作る、やさしくて芳醇な香りのパンに魅せられていく。ボヴァリー夫妻と親交を深めるうちにマルタンの好奇心は、単なる文学好きの域を超え、ジェマを想いながらパンをこね、小説と現実が入り交じった妄想が膨らんでいく。

 しかし、『ボヴァリー夫人』を読んだこともないジェマは勝手に自分の人生を生きようとする。そこへ若きアポロンのごとき美青年が出現し、ジェマは夫の目を盗み情事を重ねるようになる。このままでは彼女が“ボヴァリー夫人と同じ運命を辿るのでは?”と心配したマルタンは思わぬ行動に出る。[クロックワークス公式サイトより引用]

 『ココ・アヴァン・シャネル』(09)、『美しい絵の崩壊』(13)のアンヌ・フォンテーヌ監督の新作です。主人公のパン屋・マルタンを演じるのは、『屋根裏部屋のマリアたち』(10)、『しあわせの雨傘』(10)、『危険なプロット』(12)のファブリス・ルキーニ。彼は、フランソワ・オゾン監督の『危険なプロット』でも、虚構の世界に魅了され、現実を捻じ曲げていく教師を演じていましたが、この新作でも、虚構や幻想にとらわれていくキャラクターが実によくはまっています。

 ヒロインのジェマ・ボヴァリーを演じるのは、『アンコール!!』(12)、『ビザンチウム』(12)、『ランナーランナー』(13)のジェマ・アタートン。情事の場面はかなり大胆でエロティックです。

 ソフィー・バルテス監督、ミア・ワシコウスカ主演の『ボヴァリー夫人(原題)』(14)と同じタイミングで公開されると、より面白いと思うのですが、いかがでしょう。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   アンヌ・フォンテーヌ
Anne Fontaine
脚本 パスカル・ボニゼール
Pascal Bonitzer
原作 ポージー・シモンズ
Posy Simmonds
撮影 クリストフ・ボーカルヌ
Christophe Beaucarne
編集 アネット・デュテルトル
Annette Dutertre
音楽 ブルーノ・クーレ
Bruno Coulais
 
◆キャスト◆
 
マルタン・ジュベール   ファブリス・ルキーニ
Fabrice Luchini
ジェマ・ボヴァリー ジェマ・アータートン
Gemma Arterton
チャーリー・ボヴァリー ジェイソン・フレミング
Jason Flemyng
ヴァレリー・ジュベール イザベル・カンディエ
Isabelle Candelier
エルヴェ・ド・ブレシニー ニールス・シュナイダー
Niels Schneider
パトリック メル・レイド
Mel Reido
ウィジー エルザ・ジルベルスタイン
Elza Zylberstein
ランキン ピップ・トレンズ
Pip Torrens
マダム・ド・ブレシニー エディット・スコブ
Edith Scob
-
(配給:コムストック・グループ)
 

 

 

(upload:2015//)
 
 
《関連リンク》
ソフィー・バルテス 『ボヴァリー夫人』 レビュー ■
アレクサンドル・ソクーロフ 『ボヴァリー夫人』 レビュー ■
キャリー・ジョージ・フクナガ 『ジェーン・エア』 レビュー ■
西洋と東洋の狭間で男と女はなにを見るのか
――『シルク』と『ラスト、コーション』をめぐって
■

 
 
amazon.comへ●
 
ご意見はこちらへ master@crisscross.jp