[ストーリー] 物語は、7ヵ月前に長年連れ添った妻に先立たれ、失意の底にある78歳のフレドが、マドリードのアパートに引っ越してくるところから始まる。そのとき、引っ越しを手伝っていたフレドの娘クーカと、フレドの新たな隣人になる82歳のエルサの間にトラブルが起こる。エルサは、クーカと夫の車を傷つけておきながら、知らん顔をしていたのだ。後日、エルサはしぶしぶ修理代を持ってフレドを訪ねるが、そのとき彼が示した優しさに心を動かされる。
生きる意欲を失い、心気症を患ったフレドは、薬に頼る生活を送っている。友人の医師フアンが、気分転換のために外に連れ出そうとしても、妻の墓参り以外は家にこもりきっている。陽気で虚言壁があるエルサは、そんなフレドを強引に部屋に招き、亡夫のことや、『甘い生活』のアニタ・エクバーグのように、トレヴィの泉で愛をささやくという生涯の夢を語る。フレドは何事にも楽観的で前向きなエルサに惹かれ、人生を楽しむようになるが、彼女には秘密があった。
マルコス・カルネヴァーレ監督の『エルサ&フレド』(05)は、マイケル・ラドフォード監督、シャーリー・マクレーン、クリストファー・プラマー共演で『トレヴィの泉で二度目の恋を』(14)としてリメイクされました。そのリメイク版も決して悪くはありませんが、やはりこのオリジナルには負けます。
とにかくエルサを演じたチナ・ソリージャが素晴らしい。それはフレドを演じたマヌエル・アレクサンドレとの絶妙のバランスがあってのことですが、とにかくふたりの豊かな表情や会話に引き込まれます。ペドロ・アルモドバルの『ボルベール<帰郷>』(06)や『抱擁のかけら』にも出演しているブランカ・ポルティージョの演技も光ります。
クライマックスのトレヴィの泉のシーンは、リメイクの方が華麗ですが、このオリジナルの場合は、警官に見つかって、エルサとフレドが笑い出すという締め括り方がこのふたりに相応しいものに思えます。 |