[ストーリー] 1961年、イスラエルのエルサレムでは、歴史的な裁判が開かれようとしていた。被告は、アドルフ・アイヒマン。第二次世界大戦下のナチス親衛隊の将校であり、“ユダヤ人問題の最終的解決”、つまりナチスによるユダヤ人絶滅計画(ホロコースト)を推進した責任者である。15年による逃亡生活の果て、アルゼンチンで身柄を拘束されたアイヒマンは、イスラエルに移送されエルサレムの法廷で裁かれることになった。
このテレビ放映権を獲得したのが、アメリカの若き敏腕プロデューサー、ミルトン・フルックマンである。「ナチスがユダヤ人になにをしたのか、世界に見せよう。そのためにTVを使おう」
TVというメディアに関わる者として、フルックマンは強い使命感に駆られていた。彼が監督に指名したのは、才能があるにも関わらず、反共産主義に基づくマッカーシズムの煽りで職を失っていた米国人ドキュメンタリー監督レオ・フルヴィッツ。悪名高きナチスの戦争犯罪人の素顔を暴くためには、一流のスタッフが必要だった。
政治の壁、技術的な問題、さらにはナチの残党による脅迫などさまざまな壁を乗り越え、撮影隊は裁判の初日を迎える。それから四ヶ月間、フルヴィッツらによって撮影された映像は、世界37カ国でTV放映された。アメリカの3大ネットワークでも放映され、イギリスのデイリーニュースは速報で伝えた。ドイツでは人口の80%がこの放映を観たといわれている。[プレスより]
「ニューズウィーク日本版」の筆者コラム「映画の境界線」で、エイアル・シヴァン監督の『スペシャリスト 自覚なき殺戮者』やアリ・フォルマン監督の『戦場でワルツを』などにも触れつつ、本作品を取り上げています。そのテキストがお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● ナチスの戦犯アイヒマンを裁く「世紀の裁判」TV放映の裏側
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