ヴィクトリア:OST / ニルス・フラーム
Victoria: Original Soundtrack / Nils Frahm (2015)


 
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(初出:)

 

 

全編ワンカットで撮影された編集のないドラマ
編集に近い効果を生み出すサウンドトラック

 

 第65回ベルリン映画祭で上映され、2015年のドイツ映画賞で6部門受賞を果たしたセバスティアン・シッパー監督の話題作『ヴィクトリア』(15)のサウンドトラックです。夜のベルリンで出会ったスペイン人のヒロイン、ヴィクトリアと地元の4人の若者たちが、悪夢のような出来事に巻き込まれていくドラマが、全編ワンカットで撮影されていて、大きな注目を集めた作品です。(2016年5月、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開)

[ストーリー] 目も眩むようなクラブの照明のなか、少女ヴィクトリアがひとり激しく踊っている。やがてフロアを離れ、バーで一杯飲み、外に出る。4人の若者に声をかけられ警戒するが、どうやら悪い人間ではないらしい。

 深夜スーパーで酒を盗み、若者たちの家の屋上で酒盛りを始める。身の上話などをしながら、場所を変えて楽しい時間が流れていく。しかし、若者のひとりが大物ギャングの絡む金銭トラブルに巻き込まれていることが分かり、事態は急変してゆく――。

 サウンドトラックを手がけたのは、ベルリンを拠点に活動するピアニスト/作曲家/プロデューサーのニルス・フラーム。フラームのピアノ、エレクトロニクスに、曲によってAnne Mullerのチェロ、Victor Orri Arnasonのヴィオラ、Erik K. Skodvinのギターが加わります。

 この映画は全編ワンカットなので、基本的に編集はありませんが、フラームが手がけた音楽が、編集に近い効果を生み出しているといえます。たとえば、登場人物たちがアパートの屋上まで移動していく場面や、ひとつの山場を越えて解放感に浸る場面などでは、ドラマの音声が完全に音楽に置き換えられ、それがドラマに起伏を生み、ワンカットの流れに変化をもたらしています。

▼以下はひとつの山場を越えて主人公たちが解放感に浸る場面ですが、クラブの喧騒からアンビエントなサントラに切り替わり、トーンががらりと変わります。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Burn With Me (Victoria Edit) - DJ Koze
02. Our Own Roof
03. A Stolen Car
04. In The Parking Garage
05. Them
06. The Bank
07. The Shooting
08. Nobody Knows Who You Are
09. Pendulum

◆Personnel◆

Nils Frahm - piano, electronics; Anne Muller - cello (2,5,6,7); Victor Orri Arnason - viola (2,6); Erik K. Skodvin - guitar (2,3,4);

(Erased Tapes Records)
 

 

(upload:2016/01/11)
 
 
《関連リンク》
Nils Frahm official Site
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