The Rip Tide / Beirut
The Rip Tide / Beirut (2011)


 
line
(初出:)

 

 

音楽活動で現実の世界に見出してきた場所と

音楽を通して想像してきた場所の統合

 

 これまでベイルートの音楽は、固有の音楽が生み出される場所に対する想像力から生み出されてきたが、シングル『East Harlem』(2011年6月リリース)とサード・アルバムになる『The Rip Tide』(2011年8月リリース)の場合はどうか。

 <East Harlem>という曲がそのヒントになるだろう。ライブでコンドン自身が語っているように、これは新曲であると同時に、17歳のときに作ったとても古い曲でもある。この新作は、これまでのように訪れたり、住んだりしたことのない「場所」にインスパイアされた音楽ではない。

Beirut - East Harlem by Revolver USA

 『The Rip Tide』は、 記憶のなかの場所にインスパイアされた音楽であり、曲によっては、現実の世界ではなく音楽のなかに存在する場所を放浪する感覚を表現しているようにも思える。あるいは、彼が現実の世界に見出してきた場所と、音楽を通して見出してきた場所を、統合する作品といってもよいかもしれない。

Bombay Beach // Trailer from Alma Har'el on Vimeo.

 そしてもうひとつ、Condonがサントラを手がけた映画がある。女性監督Alma Har’elのドキュメンタリー『Bombay Beach』(2011)だ。

 舞台はカリフォルニアにあるBombay Beach。50〜60年代、郊外化の黄金時代に開発されたものの、いまではアメリカン・ドリームの崩壊の象徴になっている荒廃した地域、そこに暮らす人々を独自の視点から掘り下げていくドキュメンタリー。各国の映画祭で注目を集めているので、ぜひ観てみたい。


<
◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Candle's Fire
02. Santa Fe
03. East Harlem
04. Goshen
05. Payne's Bay
06. Rip Tide
07. Vagabond
08. Peacock
09. Port Of Call

◆Personnel◆

Zach Condon - vocals, trumpet, ukulele; Perrin Cloutier - accordion, piano; Paul Collins - bass guitar, upright bass; Ben Lanz - trombone, piano, tuba; Nick Petree - drums, percussion; Kelly Pratt - trumpet, euphonium
Heather Trost - violin, vocals

(Pompeii Records)
 

 

 

(upload:2014//)
 
 
《関連リンク》
Beirut official site
Beirut――訪れたことのない場所から過去や記憶のなかの場所へ ■
『The Gulag Orkestar』レビュー ■
『The Flying Club Cup』レビュー ■
『March of the Zapotec and Realpeople Holland』レビュー ■

 
 
 
amazon.co.jpへ●
 
ご意見はこちらへ master@crisscross.jp