ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンは、“場所”に対する独特の感覚を培い、サウンドスケープを作り上げている。彼に大きな成功をもたらした『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー(For Emma, Forever Ago)』(08)は、雪に閉ざされた森で生まれた。
バンドの分裂や彼女との破局、体調不良などの重荷を背負ったヴァーノンは、2006年の冬に父親が所有するウィスコンシンの山小屋にひとりでこもった。ギターやドラム、ホーン、マイクを持ち込んでいた彼は、そこで自己の音楽的世界を見出した。
たとえば、筆者の好きなArboreaは、夫婦のユニットで、メイン州の自然のなかに暮らし、自然にインスパイアされて独自の世界を切り拓いているが、彼らはあるインタビューで冬が最も刺激をもたらすと語っていた。厳しい寒さのなかで孤立すること、計り知れない孤独が刺激になるというのだ。
もちろん、冬の森で計り知れない孤独を味わうことが、必ずインスピレーションをもたらすわけではない。ウィスコンシンの自然のなかで育ったヴァーノンは、山々や湖によって感性を培われた。2006年の冬に山小屋にこもったときには、2頭の鹿を仕留め、食料にしていたという。
このアルバムには、そんな場所や環境でなければ生み出せない世界が刻み込まれている。
※ジャック・オディアール監督のフランス映画『君と歩く世界』は、ボン・イヴェールのセカンド・アルバム『ボン・イヴェール』に収められた<Wash>で始まり、このデビュー・アルバム『フォー・エマ・フォーエヴァー・アゴー』に収められた<The Wolves(Act I and II)>で終わる。映画に透明感のある独特のトーンをもたらしているこの二曲には、どんな意味が込められているのかは、映画のレビュー(下の関連リンク)をお読みください。 |
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◆Jacket◆ |
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◆Track listing◆ |
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01. |
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Flume |
02. |
Lump Sum |
03. |
Skinny Love |
04. |
Wolves, The (Act I and II) |
05. |
Blindsided |
06. |
Creature Fear |
07. |
Team |
08. |
For Emma |
09. |
Re: Stacks |
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◆Personnel◆ |
Bon Iver: Justin Vernon - vocals, guitars; Christy Smith - vocals, drums; Randy Pingrey - trumpet, trombone |
(Jagjaguwar) |
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