クルーニーは、『スリー・キングス』の企画に共鳴し、ただ出演するだけではなく、資金面でも協力しようとした。なぜなら、湾岸戦争を題材にしたこの映画が、後に議論の的となる中東とアメリカをめぐる石油問題にいち早く着目していたからだ。こうした問題提起の姿勢は、クルーニーの新作に引き継がれている。
『シリアナ』では、まさにその石油をめぐってアメリカの大企業やCIA、産油国、テロリストらが暗闘を繰り広げ、クルーニー扮するCIA工作員やパキスタン人の出稼ぎ労働者が生贄にされていく。『グッドナイト&グッドラック』では、50年代のマッカーシー上院議員による“赤狩り”の猛威が、9・11以後のアメリカの暴走に重ねられていくのだ。
一方、『アウト・オブ・サイト』は、クルーニーがスティーヴン・ソダーバーグと出会う機会となった。ふたりは後に制作会社セクション・エイトを設立し、クルーニーはこの会社を拠点に、様々なコラボレーションを展開していく。それはたとえば、トッド・ヘインズやクリストファー・ノーラン、ジョン・メイブリーといったインディーズや海外の異才と組むことであり、『オーシャンズ11』(01)や『ウェルカム・トゥ・コリンウッド』(02)、『シリアナ』のようなアンサンブル映画を作ることでもある。『グッドナイト&グッドラック』も例外ではない。この映画では、マッカーシーと対峙した実在キャスターのエド・マローだけでなく、彼の同僚や上司からも個性や感情が見事に引き出されているからだ。
さらに、クルーニーのテレビへのこだわりにも注目しておくべきだろう。彼が自ら監督した『コンフェッション』(02)とこの『グッドナイト&グッドラック』の2本は、まったくタイプの異なる作品だが、どちらもテレビの現場を舞台にしている。そこには、彼が子供の頃から親しみ、下積み時代に多くのことを学んできた世界に対する愛着を感じとることができる。実際、彼は『ER』以後も、映画の合間を縫うようにテレビ・ドラマの製作を手がけている。そしてもちろん今後も、映画とテレビの両面でユニークなコラボレーションを展開していくに違いない。 |