[概要] 世界中に影響を与え続ける、ロック・ドキュメンタリー映画の最高峰『ザ・デクライン』。ロンドン、ニューヨークで先行していたパンクロックの波が70年代末、カリフォルニアに到着、以後全米の地下世界に爆発的に吹き荒れたアメリカン・ハードコア/パンクのムーブメントの発火点となったロサンゼルスの、その瞬間を切り取った衝撃の記録。監督のペネロープ・スフィーリスはポルノ映画の制作を打診されるもそれを却下、逆に何かが弾けようとしていた異様な現場を活写した。
アメリカン・ハードコアの巨人Black Flagが怪物と化す前の様子、破滅と退廃の象徴Germsのダービー・クラッシュが自殺を図る直前(1980年12月7日、自殺)の姿。若者たちはメインストリームに中指を立て、警察を憎み、趣くままの服装とヘアスタイルで、異質・異端であることを恐れず、マイノリティであることを自覚しながら、おさまりきらない孤独とストレスとアグレッションをライヴで発散させ、ロックスターはくだらないと蔑視する。本作はそんなLAの地下世界のカオスをX、Germs、Black Flag、Circle Jerks、Alice Bag Band、Catholic Discipline、FearなどのLAパンクの猛者ともいえるバンドたちの暴力と堕落と怒り渦巻くライヴとともに映像におさめた唯一無二のドキュメンタリー映画である。[プレスより引用]
拙著『サバービアの憂鬱――アメリカン・ファミリーの光と影』で『反逆のパンク・ロック(原題:Suburbia)』を取り上げたペネロープ・スフィーリス監督の監督デビュー作であり、ロック・ドキュメンタリー『ザ・デクライン』3部作の第1弾でもあります。スフィーリス監督といえば、一般的には『ウェインズ・ワールド』(92)がよく知られていますが、彼女は「Pitchfork」のインタビューで、『ウェインズ・ワールド』やその他の監督作ではなく、『ザ・デクライン』こそが自分のアイデンティティだと語っています。
ただ今、2016年3月19日からレイトショー公開される本作の劇場用パンフレットに掲載されるテキストを執筆中です。 |