[ストーリー] サムとヨナタン――面白グッズを売り歩く冴えないセールスマンコンビ。現代のドン・キホーテとサンチョ・パンサのように、さまざまな人生を目撃する。ワインを開けようとして心臓発作で死んでしまう夫とその事に気づかず料理を作り続ける妻。天国に持って行くために宝石の入ったバッグを手放さない臨終の床の老女。現代のバーに立ち寄るスウェーデン国王率いる18世紀の騎馬隊――。
未来なのか、過去なのか、いつの時代か分からない。はたまた夢なのか――。何をやっても上手くいかない人たちの哀しくも可笑しな人生。万華鏡のような世界へと私たちを誘ってくれる。[プレスより]
第71回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いたスウェーデンの鬼才ロイ・アンダーソン監督の新作です。『散歩する惑星』(00)、『愛おしき隣人』(07)につづく“リビング・トリロジー”の最終章になります。
巨大なスタジオにセットを組み、細部にまで徹底的にこだわった映像は確かにすごいと思いますし、残酷さと滑稽さが表裏一体となったユーモアで人間という生き物の本質を描き出すような話術も嫌いではないのですが、筆者はどうしてもいまひとつアンダーソンの世界に馴染むことができません。
筆者は時間があれば人工的な世界を離れ、自然のなかに出たいと思う人間なので、スタジオのなかに作りこまれた世界ばかりを見せられると息苦しくなってしまいます。しかも、人間をどのようにとらえるのであれ、アンダーソンの視点は人間中心主義のように思えます。
この「どのようにとらえるのであれ」というのは、映画の導入部を踏まえたつもりです。導入部には博物館の場面があり、骨格標本の恐竜の頭蓋骨や枝にとまった剥製の鳥が、人間を見下ろしていると解釈できないこともありません。しかし、そもそも博物館が人工的な空間なので、筆者は閉塞感を覚えてしまいます。 |