ヴァレティン・ホテア監督の長編デビュー作『ロクサーヌ(原題)』の舞台は、2009年のブカレスト。物語は、30代後半の主人公タヴィが、チャウシェスク時代のセクリタテア(秘密警察)のファイルを調べることから展開をはじめる。
20年前、まだ学生だったタヴィは、ラジオ・フリー・ヨーロッパを通して、当時の恋人ロクサナにポリスの曲<ロクサーヌ>を捧げ、セクレタテアに逮捕され、恋人との仲も引き裂かれた。
20年後、その記録を調べたタヴィは、ロクサナとの間に子供ができていたことを知る。ロクサナはいまでは、成功した医師と結婚し、3人の子供の母親になっていた。タヴィは、その一家の長男が本当に自分の息子なのかどうかを確かめるために、夫婦に接近する。と同時に、20年前に自分をセクリタテアに密告した“The Captain”の正体を突き止めようとする。
レビューのテキストは準備中です。とりあえず、簡単に感想を。チャウシェスク時代という過去を見つめ直すことから、現代をとらえようとする視点は、いかにもニューウェーブ的ですが、スタイルという点では大きくことなっています。ニューウェーブの作品は、手持ちカメラや長回しを駆使して、現場から生々しい感情を引き出そうとしますが、この作品はあくまで脚本に立脚し、生身の人物とその感情よりもストーリーテリングを重視しています。
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