ルーマニア国内の映画事情に触れた記事などを読むと、一般人が求めているのは、革命以後の社会を鋭く掘り下げ、海外の映画祭で高く評価されるような“ニューウェーブ”ではなく、娯楽映画なのだとよく書かれている。これは、とりあえずそういう人たちが単純に楽しむためのアクション・コメディといえる。
主人公は、それなりに手荒なこともやるものの、負債者たちから金を回収することができない不器用な取り立て屋コンビのハープーンとバプテスト。そして、彼らに追われる負債者のひとりで、色仕掛けでなんとか金のある側につこうと画策しているエレノラ。ボスたちから不首尾を厳しく責められたコンビは、現金輸送車の金を強奪する計画に協力するはめになり、ただ手を貸すだけではなくそれを横取りしようと画策するが――。
一癖も二癖もあるキャラクターたちを軸にした過剰な表現が詰め込まれたB級コメディだが、やはりアメリカ映画などとは一味違う。
ルーマニア社会をめぐる自虐的なユーモアが盛り込まれている。ロシア人のイヴァン、アルバニア人のエズレ、ルーマニア人のボーンズという三人のボスたち、モルドヴァ人の取り立て屋コンビ、修道女を装っているサディスティックな麻薬の売人クルエラなど、国や民族の違い、宗教をめぐるユーモアも印象に残る。そして、最終的に貴重な恐竜の骨まで絡み、めまぐるしい展開を見せるスピードとパワーは、バルカン・サウンドに通じるものを感じたりもする。
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