[Story] すべての始まりは2014年、妻子とリヨンに暮らす40歳のアレクサンドルが、同じボーイスカウトにいた知人から「君もプレナ神父に触られた?」と尋ねられたことだった。辛い記憶がよみがえった彼は、今もその神父が子供たちに聖書を教えていることを知り、大きな力を持つバルバラン枢機卿に相談する。枢機卿は彼の訴えに理解を示すものの、一向に神父を処罰しようとはしない。業を煮やした彼は、自分の事件は時効でも他に被害者がいるはずだと考え、神父に対する告訴状を提出する。
告訴を受けて動き出した警察は、91年に以前の枢機卿に送られた手紙を発見する。それは被害者フランソワの母親が神父の行いを訴える手紙だった。その出来事を過去のことと割り切っていたフランソワは、神父が現役であることを知って怒りがこみ上げ、神父だけでなく、事件を隠蔽した枢機卿も訴える決意を固める。さらに、フランソワが立ち上げた被害者の会の記事を読み、心を動かされた時効前の被害者エマニュエルが声も上げる。
[Introduction] 新作を発表するたびに、心待ちにしていた映画ファンを、全く違う世界へ と誘うフランソワ・オゾン。今やフランス映画界のトップにして最先端に立 つオゾン監督が、初めて実話に基づいた物語に挑む。ヨーロッパを震撼させ た神父による児童への性的虐待事件の真相に迫ったのだが、事件の裁判は現 在も係争中で、渦中の神父から上映差し止めを訴えられたという、オゾンの 華麗なるキャリアでは前代未聞の事態へと発展した話題作が、ついに日本に も旋風を巻き起こす。
出演は、若き天才グザヴィエ・ドラン監督の『わたしはロランス』で圧倒 的な存在感と美しさを発揮したメルヴィル・プポー、『ブラッディ・ミルク』 でセザール賞を受賞したスワン・アルロー、ヴェネチア国際映画祭で監督賞 を受賞した『ジュリアン』の父親役が記憶に新しい実力派のドゥニ・メノー シェ。本作で 3 人揃ってセザール賞にノミネートされ、心をうがつ傷を繊細 かつリアルな演技で表現したアルローが見事助演男優賞を獲得した。 [プレスより]
ニューズウィーク日本版の筆者コラムで本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● 性的虐待を隠蔽し、加害者を野放しにする秘密を守る文化 『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』 |